ビジネス

2020.06.02

ロックダウン直前にオープンしたインスタ映えレストランの起死回生

満を辞しての開店もタイミングが悪かった。起死回生の一手は「体験」だった。


ユーザーデータを元にメニューを再編成


これに加え、CaviarやDoordashといったデリバリーサービスを活用し、集まった顧客データを元に、メニュー内容も顧客のニーズに対応し始めた。

具体的には、パスタ料理を除くディナーメニューを大幅に廃止し、朝食とランチの終日提供を開始。これは、サービスをピボットしてから数週間の顧客ニーズを分析した結果、多くの人々がよりカジュアルなメニューを求めていることが判明したからである。

“人は気分が高揚したり、恐怖を感じると、パンケーキやエッグズベネディクトなどの、ブランチで食べるような、よりヘビーな内容を欲する傾向があります。” とオーナーは語る。

また、お客さんは、美味しくて可愛いくて、見ているだけで元気をもらえるものを求めていると考えている。現在では、シグニチャーカクテルである「クラウド9」を始めとしたアルコール類もテイクアウトすることもできる。


テイクアウトでもユーザーを感動させる体験を提供


そして最近、ソーシャルメディア上でブランチボックス (2人用で39.99ドル)のプロモーションを開始した。このブランチボックスには、飲み物、フレンチトーストまたはリコッタパンケーキ、ベーコンまたはソーセージ、卵が含まれている。

そしてオプションで20ドルのシャンパンボトルを追加すると、パステルピンクのパッケージに、食用のお花もトッピングで添えた状態で提供される。これはカップルがをターゲットだ。

インスタにはレストランで提供される状態の写真がアップされているが、現在はテイクアウトとデリバリーに限定されるため、ボックスの開封体験を通じて、ユーザーになるべく感動を与えたいという戦略だ。

カップル向けのブランチボックスに加え、ファミリースタイルのボックスも大成功を収めている。イースターの週末だけで1000個近く売れた。

これらの施策により、このレストランでは支出をまかなうレベルまで売上を確保することに成功した。それにより、万が一この状態が続いたとしても、向こう数ヶ月は乗り越えられる目処が付いたという。

そして、数週間後には、Son & Gardenのキッチンを拠点としたデリバリー専用の新ブランド「Farmhouse Express」を立ち上げる予定である。

デリバリーされるメニューの写真

顧客が払うのはモノ自体だけでなく体験への対価


今回紹介したレストランは、元々来客者が受け取る顧客体験に特化していた。それがテイクアウトとデリバリー専門になることを強いられた結果、その体験をどのように変換できるかにフォーカスを当てた。そして、ユーザーニーズをしっかりと理解し、サービスのピボットを行った。

重要なポイントとしては、お客さんが店内で受け取る体験をできるだけ再現し、感動させることに成功した所。実際のところ、リサーチデータをみても、世界の若者を中心に消費者の多くは、”モノよりも体験にお金を使いたいと思っている”と答えている。

このことからも、消費者が求めるのはモノではなく体験であり、優れた体験を提供することで、確実にユーザーの心をつかむことが出来る。言い換えると、プロダクトではなくてエクスペリエンスを売ることが求められてくる。

この点については、食事自体だけではなく、食事をする時間を演出するSon & Gardenの視点から学べることは多い。

困難な時こそ必要になる新しい発想


コロナショックにより、飲食系のビジネスはかなりの窮地に立たされていると考えられる。その一方で、今回紹介したSon & Gardenのように、機転を効かせることで難局を乗り切っているケースもある。

大きな変化が起こった時、今までのやり方のままでは生き残っていくのは非常に難しくなってくる。そんな時には顧客視点に立ち返り、ニーズを冷静に理解するためにバリュープロポジションを作り直してみたり、リフレーミングなどの手法で、視点を変えることが求められる。

(この記事は、btraxのブログfreshtraxから転載したものです)

文=Brandon K. Hill(CEO of btrax. inc)

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