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2020.05.30 10:00

新型コロナで増えた消費、減った消費。自粛の緩和で別れた明暗は解消されるか


1|巣ごもり需要の高まり~出前や家飲み、美容家電、ゲームや本等の室内型娯楽、休校でオンライン教育


「巣ごもり需要」については、食の面では、食事代や飲酒代などが減少する一方、出前やビール、チューハイ・カクテルが増加していることから、外食から中食へ、外で飲むのではなく「家飲み」へと、需要が外から中へと移っている様子がわかる。若者を中心にオンライン飲み会なども増えているとも聞く。

また、日用品・美容では、外出を控え、外出時にマスクをする生活では化粧をする機会が減るのか、口紅などのメイクアップ用品の支出額が減少している。また、緊急事態宣言下では多くの理美容店が休業したため、理髪代やカット代が減少する一方、理美容用家電器具(ヘアドライヤーや美容家電を含む)やヘアコンディショナーなどの支出額が増加しており、美容の面でも需要が外(あるいは外向きのもの)から中へと移っている。

ファッションは全体的に支出額が減少している。巣ごもり生活では外出着を新調する必要も薄れる。また、新型コロナの影響によって卒入学式の中止・規模縮小が相次いだ影響もあるのだろう。一方で、生地・糸類の支出額は増加している。時間に余裕のある巣ごもり生活では裁縫をしたり、マスク不足の中で布マスクを作る消費者も増えているのかもしれない。

交通や教養娯楽でも需要が外から中へと移っている。鉄道運賃をはじめとした移動や旅行・レジャー関連支出は大幅に減少する一方、家の中で楽しめるゲームや書籍の支出額は増加している。

教育では、学習塾などの補習教育や学習参考教材などの支出額が増加しており、3月1日からの政府による全国一斉休校の要請によって、自宅での子どもの教育需要が増している様子がうかがえる。緊急事態宣言下では学習塾にも休業要請は出ているが、新たにオンライン授業やオンライン模試などに対応し始めた塾も多いようだ。

つまり、本来は外出型の消費行動でも、屋内型のサービス提供への切り替えが可能であれば、巣ごもり需要を上手く取り込めている領域もあるようだ。

2|デジタル需要の高まり~ネット通販、サブスク系デジタルサービス


「デジタル需要」としては、ネット通販やデジタルコンテンツ需要の高まりがあげられる。

ネット通販については、運送料の支出額が増加していることから、需要が高まっている様子がうかがえる。なお、3月の二人以上世帯のネット通販全体の支出額(インターネットを利用した支出総額:22品目計)は旅行関連支出の大幅減少によって、前年同月と比べて実質▲4.6%だが、食料品や飲料をはじめ多くの領域で支出額が増加している。外出自粛に加えて、非接触志向が高まっている影響もあるだろう。

また、音楽・映像・アプリや電子書籍などデジタルコンテンツの支出額が増加している。これらのデジタルコンテンツ配信サービスの多くは、月額定額で使い放題のサブスクリプションモデルであり、時間を持て余す巣ごもり生活と相性が良い。

なお、ネットを利用した購入では保険の支出額も増加している。これは非接触志向の高まりの影響もあるのだろうが、感染症リスクへの懸念から保障ニーズが高まっている可能性もある。ただし、保険種類等のデータは公開されていないため、他のデータもあわせて見る必要がある。
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文=久我尚子(ニッセイ基礎研究所 主任研究員)

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