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2020.05.30

新型コロナで増えた消費、減った消費。自粛の緩和で別れた明暗は解消されるか

巣ごもりの増加に代わる新しい消費行動への期待が高まる(Photo by Shutterstock.com)


3|シェアリングサービスは明暗~出前などの配達系は需要増、モノやスペースなどのシェアは一旦ストップ


手元にデータはないが、近年、消費行動において存在感を増しているシェアリングサービスの状況について考察したい。シェアリングサービスには、モノや移動手段、スキル、スペースといった多様な領域があるが、一部を除き多くの領域で新型コロナによる打撃を受けていると考える。

需要が増しているのは、配達系(移動手段)のシェアリングサービスだ。前述の通り、出前やネット通販の利用が増えているためだ。また、スキルのシェアのうち、英会話やヨガをはじめレクチャー形式でオンライン対応(切り替え)が可能なサービスは、時間のある巣ごもり生活では、むしろ需要がじわりと高まっている部分もある。

一方で、他のサービスは厳しい状況にあるだろう。非接触志向の高まりによって、今、他人と何かをシェアすることへの抵抗を感じる消費者は多いと考えるためだ。また、シェアリングサービスでは、カーシェア(*1)や民泊、外出用の服やバッグのシェアなど、外出型の消費行動に伴うサービスも多い。よって、外出自粛によって需要が一旦止まってしまっている。

スキルのシェアとして見られる家事代行やシッターサービスについては、子どもの休校や学童・保育所の休所が続く中で、平常時より、むしろ強い需要があると言える。しかし、消費者がサービス利用を控える(あるいは提供者が出向くことを控える)傾向もあるだろう。

*1 カーシェアでは通勤せざるを得ない場合の通勤手段など、非接触志向の高まりによって逆に一部で需要が増している状況もあるようだ。このような状況はスペースのシェアなどでも見られるだろうが、全体としては厳しい状況にあるだろう。

今後の消費行動~しばらくは巣ごもり型を軸に身近な外出型消費から、働き方変化などの要因も


新型コロナの感染拡大によって、巣ごもり消費やデジタル消費は増える一方、外食や旅行、レジャー、ファッションといった外出型の消費は大幅に減り、明暗が分かれている。今後、新型コロナの収束が見え、緊急事態が解除される地域が増えていけば、徐々に巣ごもり型の消費行動が減り、外出型の消費行動が増えていくのだろう。しかし、ウィルスに対峙する科学的な方法が明らかにならない限りは、即、元通りの状況にはなりにくい。ウィルスとの戦いは長期戦になるという見方もあるため、しばらくは、外食などの身近な外出型の消費行動で外出自粛のストレスを少しずつ解消しつつ、巣ごもり型を軸とする消費行動が続くだろう。また、雇用環境が急速に悪化しているため、収入が減少することで、必需性の低い消費には充てにくくなるという要因もある。

一方で、ネット通販やサブスク系のオンラインサービスなどのデジタル消費は、今後も需要が拡大していくだろう。新型コロナの影響がなくとも、近年、進んでいた流れだからだ。日本では共働き世帯や単身世帯が増加傾向にあり、利便性を重視する消費者が増えている。また、現在のところ、サブスク系のデジタルサービスの利用は若者が中心だが、スマートフォン保有率が高まっているシニアの動向にも注目したい。

そして、今回の巣ごもり生活では働き方が大きく変わった。テレワーク環境の整備は、そもそも「働き方改革」で進められてきた流れだ。よって、デジタル消費と同様、今後、一層環境が整うのだろう。

働き方が変われば、暮らし方も変わる。暮らしが変われば、消費行動も変わる。ウィズコロナ・アフターコロナの消費行動は、単に中か外かだけではなく、複数の要因が絡み合う。

(この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年5月13日)からの転載です)

文=久我尚子(ニッセイ基礎研究所 主任研究員)

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