経済・社会

2020.05.21 07:30

ウーバーイーツ、出前館、キッチンカーも。神戸市の飲食店救済の舞台裏


郊外の団地にはキッチンカーを派遣


このようなデリバリーサービスの拡大策を発表すると、今度は市民や市の議員たちから、郊外の住宅団地はほとんど配達区域外なので、何か別の対策をとれないのかという声が上がった。そこで長井は、食料品の調理や移動販売ができる「キッチンカー」に目を付けた。

そして、キッチンカーと出店場所のマッチングをする「mobimaru(モビマル)」というサービスを提供する日本移動販売協会(大阪市)と提携。客足が遠のいた三宮など市街地の飲食店が、キッチンカーを借りて住宅団地に出店する実証実験を始めた。今月7日から2つの団地に6台が派遣されると、外食気分を楽しもうとする人たちが、真剣なまなざしでメニューを見つめていた。



緊急事態宣言からわずか1カ月で、矢継ぎ早に独自の支援策を発表した神戸市。これには背景がある。この数年、神戸市は、シリコンバレーの投資ファンドとスタートアップ企業を育成したり、フェイスブックやヤフーと連携したり、挑戦的な「実験都市」をめざしてきた。

もし、昔ながらの考えのままの自治体なら、ウーバーイーツと組むのには抵抗があるだろう。なぜなら、地元経済を支える飲食店に、外国企業が運営するサービスを自治体が勧めるのは、かなりハードルが高い。ところが、神戸市がウーバーイーツに注目したのは昨年のこと。長井は、久元喜造市長から「ウーバーイーツを使って、何か市民の役に立つことを検討してほしい」という指示を受けていた。だからこそ、コロナ禍の混乱のなかでも、短期間で交渉をまとめることができたのだ。

新しいものを積極的に取り込むのは、明治の開港から始まって、阪神・淡路大震災でも発揮されてきた。こう考えると、一連の独自の支援策は、実に神戸らしい施策と言えよう。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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文=多名部重則

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