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地方発イノベーションの秘訣

「出前館」の配達バイク

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言で、持ち帰りやデリバリーを始める飲食店が一気に増えた。とはいえ、とりわけデリバリーは、注文を受け、配達して、料金を受け取るのに、店内での営業とは異なるノウハウが必要だ。 

そこで、最近はウーバーイーツを採用する飲食店も多く見られるようになった。しかし、デリバリーサービスに慣れない店側にとっては、手数料がいくらなのか、どういう仕組みなのかが、いまひとつわかりにくい。

そんな状況下、神戸市は、デリバリーへの転換やキッチンカーの貸出しなど、飲食店の売上確保をめざした独自の飲食店への支援策を次々と打ち出した。

ほとんどの自治体の担当者が、新型コロナウイルスで苦しむ店側の窮状を知りながらもなかなかアクションを起こせない中、なぜ神戸市はこのスピードで動けたのか。その仕掛け人である神戸市「企画調整局つなぐラボ」の特命係長、長井伸晃に話を聞いた。

ウーバーイーツに続き出前館とも


4月10日、ウーバーイーツは神戸市とともに飲食店と家庭を支援すると発表した。自治体との連携は日本初だ。政府が緊急事態宣言を発出し、飲食店から客が消えた3日後のことだった。

支援内容には、飲食店の初期手数料の支払い免除に加え、利用者が受けられるプロモーションキャンペーンの割引が店側の負担なしできる(ウーバーイーツと神戸市が負担)ことも含まれていた。これには、店側と利用者の負担を軽減して、デリバリーサービスの利用を拡大させようとする狙いがあった。実施期間は4月13日から7月12日までの3カ月間だ。

その2週間後となる4月24日、今度は大阪市に本社を置く「出前館」代表取締役社長の中村利江が神戸市役所を訪れ、仕掛け人である長井とともに、市内の飲食店のデリバリーを拡大させると記者会見を行った。出前館が、自治体と組んで飲食店を支援するのも初の試みだった。

出前館の中村は「今回、多くの自治体から組みたいとアプローチがあった。話が進まないこともあるが、神戸市はスピード感が違っていた」と話す。実を言うと、中村と長井が初めて会話したのは、ウーバーイーツとの発表のあと。長井は事業連携協定を急いだ理由を、「早くしないと、店を閉じてしまう飲食店がどんどん増えてくると感じた」と言う。


「企画調整局つなぐラボ」の特命係長、長井伸晃

ところが、デリバリーや持ち帰りならではの難しさも浮かび上がった。店内で提供するのと違い、食べるまでに時間がかかるので、食中毒を引き起こしかねないのだ。他方で、初めてデリバリーや持ち帰りを始めた店からは、「どのような容器を使えばいいのか。そもそも容器が品切れで手に入らない」「温かいモノや冷たいモノはどう梱包するのか」という疑問も上がっていた。

そこで長井は、テイクアウト・デリバリーの「スターターキット」として、持ち帰り用の容器と衛生管理を啓発するリーフレットを飲食店200店舗に無料で配付することにした。安全・安心な食事提供への支援にも万全を期したかたちだ。

文=多名部重則

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