では、今回のコロナ危機は、前回の世界金融危機とどう違うのだろうか? 主要なデータで比較してみよう。
世界金融危機がピークに達した2009年3月、米国では80万人の雇用が失われた。この不況期間全体で見ると、失業者の数は合計で約860万人に達した。一方、2020年のコロナ危機では、4月の1か月間だけで失業者数は2000万人以上に達し、危機が始まってからの通算では3300万人以上が職を失っている。
世界金融危機における失業率は、この期間中で最も高かった2009年10月の時点で10%だった。一方、2020年4月の失業率は、14.7%という驚くべき数字に達している。
株式市場に目を向けると、世界金融危機の終了時点で、株価はピーク時から40%落ち込んでいた。一方、今回のコロナ危機では、S&P 500の下落幅は、2月のピーク時との比較で14%にとどまっている(とはいえ、今回の危機はいまだ終息とはほど遠い状況だ)。
2008年と2009年に、米国では議会が2つの景気刺激策を可決した(それぞれブッシュ政権下とオバマ政権下で実施され、前者は7000億ドル、後者は8000億ドル規模だった)。これらの景気対策は、何かと物議を醸した銀行の救済に道を開くものだった。
一方、今回のコロナ危機では、新型コロナウイルス感染拡大に伴う打撃を和らげるための緊急対策として、議会が承認した財政支出の額はすでに3兆ドルに達する。しかも、さらなる追加支出が発生することはほぼ確実とみられる。
とはいえ、今回の経済危機と2000年代の世界金融危機では、その経緯に決定的な違いがあることは、心に留めておくべきだろう。ブルッキングス研究所のルイーズ・シャイナー(Louise Sheiner)は、「世界金融危機は、金融市場のいびつな状況の結果として発生したもので、引き金を引いたのは主に住宅セクターだった。今回の危機は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という、全くの外部要因によって引き起こされたものだ」と指摘する。
しかし、今回のコロナ危機に関しては、実際の失業率は現在発表されている数字をおそらくは上回っている点も、注意に値する。公表されているデータには、失業手当を申請できない労働者や、求職活動をやめてしまったレイオフ中の失職者などが含まれていないからだ。