財源は税金ではない? コロナ危機で崩れる「財政赤字」の神話

巨額の財政赤字を抱えるアメリカ。左=ドナルド・トランプ大統領、右=ジェローム・パウエルFRB議長(Getty Images)

新型コロナウイルスによる経済的打撃が世界中で深刻な問題となるなか、米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は5月13日、米経済が長期にわたり低迷する恐れがあるとした上で、議会と政府は支出を拡大する必要があるとの見解を示した。

すでに行われている経済縮小への初期対応が無駄にならぬようやむを得ないとはいえ、政府は巨額の財政負担を背負えるのかという疑問を抱く人も少なくないのではないだろうか。

パウエル議長は4月末にも、経済活動の「前例のない」落ち込みを警告し、現在は財政赤字への懸念による「妨害を許す時ではない」と断言していた。

財務省は5月4日、第2四半期に過去最大の3兆ドル(約320兆円)の借り入れをする方針を明らかにし、米連邦政府の債務残高は5月6日までに25兆ドル(約2560兆円)の大台を突破。今後も前例のないペースで拡大する見通しだ。

とりわけ「財政赤字を膨らますのは悪いことだ」「財政収支のバランスを取らないといけない」という一般的な通念に照らしてみれば、経済対策の財源をどこに求めるかという議論は重要だ。

緊急事態下において、果たして財源の見通しをどこから得ているのだろうか。

「政府支出に財源の裏付けは必要ない」MMTの財政赤字論


この疑問に答えた、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校教授のステファニー・ケルトンのツイートが話題だ。FRBによる緊急の経済対策が開始された3月半ばに、彼女はニューヨークタイムスで以下のように語っている。

「この公衆衛生上の危機が金融危機へと変貌した際、FRBはすぐさま行動し、1週間足らずで数兆ドルを金融システムに投入しました。 銀行に短期ローンが提供され、金利は実質的にゼロへと引き下げられ、7000億ドル相当の米国国債と不動産担保証券の購入開始が発表されたのです。その後、FRBは信用の流れをサポートするために、最大1兆ドルのコマーシャルペーパーを購入する権限を自らに与えました(追加の対策は確実に続くでしょう)。

一連の発表が行われる中、私はリーマンショック時のFRB議長であるベン・バーナンキの8秒間ほどの動画をツイートし、中央銀行がこれら1兆ドルの措置を実現するために、資金をどのように工面しているのかを説明しました」

司会者「FRBが支出に用いたのは税金だったのですか?」

バーナンキ「いえ、税金ではありません。私たちはただ、コンピューターを使って操作しただけです」
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文=渡邊雄介

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