米国中毒管理センター協会(AAPCC)の集計によると、今年4月の消毒剤の誤使用に絡む事故件数は、前年同期比で122%の急増だった。この数字は漂白剤で77%、手指除菌用ローションで56%の増加だった。
事故の増加の背景に、トランプ大統領の発言があるのかどうかは定かではない。大統領は4月23日の会見で、患者の治療方法をめぐり「消毒液はあっという間にウイルスに効くようだ。注射したりできないものか」と発言した。
その後、専門家や議員たちの批判を浴びたトランプは、「私は皮肉をこめて記者たちに質問しただけだ」と弁明した。
消毒剤や漂白剤、殺菌剤が体内に取り込んだり、注射すべき物質ではないことは、言うまでも無いだろう。しかし、感染拡大の初期の頃から、消毒剤の需要は急拡大しており、それに連れて事故件数は急増していた。
最も危険にさらされやすいのは子供たちだが、大人たちも薬剤の取り扱いを誤り、事故を起こしてしまうケースがある。その一例にあげられるのが、漂白剤とビネガー(食用酢)を不注意で混ぜてしまい、有毒ガスを発生させてしまう事例だ。
トランプはパンデミック以降に「戦時大統領」を名乗り、連日ホワイトハウスのブリーフィングで奮戦ぶりをアピールしているが、支持率は40%台前半と評価は上がらない。報道によると、大統領補佐官らはブリーフィングの回数を削減する協議を進めているという。
ニュースサイトAxiosの取材に答えた匿名の関係筋は、「わざわざ会見を開いても、消毒剤の注射を薦めて批判されるようでは意味がない」と話した。
トランプは5月11日に2週間ぶりにホワイトハウスのローズガーデンで、定例ブリーフィングを開いたが、中国系米国人記者から批判的な質問を浴び、「その話は中国に聞け」と怒りをあらわにし、会場を去った。