ビジネス

2020.05.14

客の「お節介」で店を救う。『#勝手に応援プロジェクト』が狙う食文化の存続


「食文化」が街を作り、経済を生む


── 話は変わりますが、このまま飲食業界の低迷が続いた場合、経済全体にはどのような影響を及ぼすと考えられるのでしょうか。

山本:「文化経済学」という分野をご存知でしょうか。たとえば観光地が観光客で賑わうように、「文化」がある場所には人が集まる。文化を求めて人が行き交うことで、関連する周辺の業界すべての経済が大きく動く。つまり「経済の起点には文化がある」という考え方です。

その延長線上で、「食文化」がある場所には必ず人が集まってきました。しかも「食」が人を動かす力は年々大きくなってきていると感じているので、食文化を起点に生まれている経済の大きさは相当なものだと思います。逆に言えば、食文化が失われた際に経済に及ぼす影響も計り知れません。そして私は、そんな食文化を担う存在が「街」や「地域」の飲食店さんだと思っています。

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実際に「#勝手に応援プロジェクト」において支援者が多いお店は「地元民に愛されているお店」や「その地にしかないローカル店」。住民たちにとっては、そのお店が皆の集いの場所であり、コミュニティが発生する場所だからです。もしこれらのお店がなくなってしまえば、街からは活気が消え、街の居心地が大きく変わり、人の出入りがなくなってしまう。

飲食店さんがなくなることは、その街の食文化がなくなり価値が下がること、周辺の経済が縮小することと同義なんです。しかも、飲食店さんや食文化は一度失われてしまうと元に戻すことは容易ではありません。

── 事態が収束した後ではもう遅い、と。

山本:そうなんです。ですから、手遅れになる前に何か手を打たなくてはいけません。ただ、プロジェクトをスタートした3月1日時点と現在を比べると、コロナの影響は中長期化が予想されています。いつ収束するか見通しが立っておらず、さらには収束後もこれまでと同じ世の中、同じ行動原理になるとは到底思えません。そこで、お客さんがコロナ以前と同じ頻度で外食をしない状態でも収益を確保できる仕組みを作らなくてはいけません。今までは「来店」が収益の基軸でしたが、今後は「来店以外」の収入源を用意する必要があります。

「食コミュニティ」をユーザーと一緒に創造しているキッチハイクだからこそ、お客さんのアクションをきっかけに、飲食店さんを盛り上げていけたらと考えています。実際に今、「#勝手に応援プロジェクト」からつながる、更なるサービスラインも準備中です。ただ、私たちが提供できるものはあくまでもプラットフォーム。大好きな飲食店さんを支えるためにはお客さんの力が必要不可欠なので、ご協力いただけると嬉しいです。

文=倉益璃子

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