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2020.05.15

多角化経営と利他精神が生む「真のオープンイノベーション」

京セラ執行役員研究開発本部長の稲垣正祥(中央)、コーポレートデベロップメントグループの投資部門を担う事業部長の小泊建二(右から二人目)らが中心となって取り組む。


スタートアップ投資も本格化


「CVCという形態はとっていないものの、投資数や投資金額は同等規模で積極的に取り組んでいる」と語るのは、コーポレートデベロップメントグループの投資部門を担う事業部長の小泊建二だ。18年より、スタートアップへの直接投資を行い、19年に入り、VCのグローバル・ブレインへのLP出資も行っている。投資先は、公表していない投資も多いが、19年11月に出資した空飛ぶバイク「ホバーバイク」などを開発するA.L.I.テクノロジーズをはじめ、10社程度。 19年に製品量産化を発表したMIT発のリチウム電池開発の24Mテクノロジーズなど海外への投資も多い。

「投資先のスタートアップとの協働はもちろん、『京セラフィロソフィ』など我々が持つ経営哲学の強みも起業家と共有していきたい。今後については、稲盛和夫の言葉『次にやりたいことは、私たちが決してできないと人から言われたことだ』ではないですが、技術革新を事業機会とすべく、フロンティアを開拓していきたい」(小泊)

「スタートアップとの協働、オープンイノベーションについては、自社の利益だけを考えてはいけないと思っています。稲盛がよく『利他』と言っていますが、新しい事業や産業を興す人をサポートして、結果として大きな産業になれば、世の中にとっても、我々にとっても、大きな価値になりますから」(稲垣)


京セラ◎創業者・稲盛和夫が1959年4月設立。2019年3月期の売上高(連結)は1兆6237億円。グループ従業員は7万6863名。近年、オープンイノベーションの取り組みを強化している。

α TRACKERS(アルファトラッカーズ)◎独立系VCのグローバル・ブレインが2018年12月に設立した、オープンイノベーション推進に積極的な大企業を集めたコミュニティ。日本を代表するCVC運営企業をネットワーク化して各社の活動を支援していく。参画企業は京セラを含む35社。Forbes JAPANはメディアパートナーとして関わる。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN 3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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