ビジネス

2020.05.14 10:00

「デザインの民主化」で世界を変えたい──利用者を190カ国に増やした戦略




ふつうなら怖気づくところだろう。しかし、すでに懐疑的だったシリコンバレーの投資家たちを味方につけ、中国市場を熟知し、2億ドルの預金をもつパーキンスにとってすべては計画どおりだ。

「確かに、素晴らしい仕事を成し遂げたと思います。でも、したいことと比べたら些細なことです。できることの1%に過ぎません」とパーキンスは言う。

「私たちの企業ミッションは世界にデザインの力を与えることです。それも文字どおり、世界中に、です」

それでも、大企業へのサービス展開でいえば、キャンバはただの新参者に過ぎない。「Canva for Enterprise(法人向けキャンバ)」は19年10月、ニューヨークの私的なイベントの場で、JPモルガンやハブスポットなど、100社の関係者を前に発表された。

法人向けビジネスを展開するにはややスロースタートだが、キャンバにとって致命的にはなりえない。19年12月には、同社はアドビ社の製品に近い動画編集ツールやパッケージソフトを発表した。すでに8000万人のユーザーが利用する、“パワーポイントの無料版”に相当するプレゼン資料制作ツールに関しては改善を重ねている段階だ。

とはいえ、キャンバの長期的な成長は、何千もの社員が利用する法人契約に移れるかにかかっている。キャンバのパッケージソフトにさらなる機能を加えて数年、パーキンスは米企業向けには真逆のアプローチを考えている。あえて限られた種類のテンプレートや選択肢しか提供しないことで、キャンバは顧客企業が社員に安心してコンテンツ作りを任せることを期待しているのだ。

例えば、テキサス州にある中規模の住宅・商用不動産開発会社「レアルティ・オースティン」では、6人からなるマーケティングチームが、不動産仲介人がオープンハウスなどで用いるチラシやデジタル商材を作成していた。それがいまではキャンバを使って、会社の550人を超える仲介人が自分たちのタイミングでより効率的に商材を作っている。
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文=アレックス・コンラッド 写真=ディーン・マッケンジー / IDC 翻訳=Forbes JAPAN 編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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