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Canva CEO メラニー・パーキンス

ブログにウェブサイト、プレゼンテーション資料、名刺、ハガキ、果てはポスター……。世界は「デザイン」に満ちあふれている。だが、それを作るためのツールは少ない。“デザインの民主化”で世界を変えたい──。そう願うオーストラリアの起業家に迫った。


2013年5月のある暑い朝、「Canva(キャンバ)」のメラニー・パーキンスCEO(32)は、大富豪リチャード・ブランソンが所有するネッカー島とモスキート島間の海峡にカイトボードに乗って漂っていた。東カリブ海の強い潮流のせいで彼女の船は空気が抜けてしまって使い物にならず、起業家は救出を数時間も待つハメに陥ったのだ。

犬かきをするうちに、彼女は左足をサンゴ礁にぶつけてかすり傷を負った。それでも彼女は、新しい趣味にはその値打ちがある、と自分に言い聞かせた。なにせ、これは彼女が恋人と6年前に立ち上げた、デザインソフトウェア企業の資金調達戦略の“カギ”になっていたからだ。

キャンバは、テクノロジーの中心地であるシリコンバレーから1万km以上も離れたオーストラリアに拠点をおいている。資金調達どころか、面談の機会を得ることすらままならない。パーキンスは100人以上の投資家たちから「ノー」と断られていた。そうしたこともあり、故郷でもある豪南西部の街パースで行われたプレゼンコンペで、カイトサーフィンが趣味の投資家グループの主宰者に会う機会を得るなり、すぐに練習に取り掛かった。

危険な思いをすることにはなるが、それによって、次に投資家グループがスタートアップを対象にしたコンペを開いたとき、彼女もプレゼンの機会を得ることになるからだ。「リスクを背負い、ダメージも受けるけれど、その甲斐あって報酬を得て会社を立ち上げる―。そういう感じでした」とパーキンスは振り返る。

「片足をちょっとでも玄関に入れられたら、そこから少しずつドアをこじ開けていかなくてはいけません」

そのような忍耐は、キャンバでは長い間不可欠だった。パースで生まれた同社は、卒業アルバムを制作する会社として始まった。それが今や、世界でも指折りの巨大企業へと成長した。世界190カ国で2000万人以上のユーザーが同社の“フリーミアム・モデル”にもとづくウェブアプリを利用して、ピンタレストに投稿するグラフィックアートからレストランの洗練されたメニューまで幅広く作っている。

文=アレックス・コンラッド 写真=ディーン・マッケンジー / IDC 翻訳=Forbes JAPAN 編集部

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