Stay homeで金融教育 子どもと学べる3つの話題

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一律給付「10万円」は多いか少ないか


次に、緊急経済対策の一環として発表された10万円の一律給付について、10万円という金額が妥当かどうかという議論をしてみよう。これも高校生や大学生とオンラインで話したが、面白いことに、10万円という金額がちょうどよいという意見はほとんど出ず、「多すぎる」と「少なすぎる」という2つの意見に分かれた。

それでは、いくらであればよかったのだろうか。国が決めることであるから、もちろん何かしらの根拠があるにちがいない。

総務省統計局が発表した「家計調査報告 家計収支編2019年(令和元年)平均結果の概要」を見てみると、2019年の2人以上の世帯(平均世帯人員2.97人,世帯主の平均年齢59.4歳)の消費支出は、1世帯当たり1カ月平均29万3379円となっている。つまり、1人当たりの消費額は約9万8780円ということになる。

ということは、このデータに基づけば、今回の10万円という金額は妥当だと言えるだろう。ニュースを見ていると、「10万円」という数字に対して、ついつい感覚や印象だけでその多寡を議論しがちだが、なぜそのような意見を持つのか、子どもたちと考えてみるのもいいかもしれない。

その際には、少なくとも公的なデータなどの裏付けはあるべきで、このようにニュースで流れる一律給付10万円という話題をきっかけにして、一次情報を調べるという習慣を身に付けることも重要だ。

補助金の財源について考えてみる


最後の話題は、補助金の財源についてだ。新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した企業や、収入が減った個人に対して、国が補助金を出すという話が出てくると、必ず話題に上る。

これについては、大人でも意見が2分されるものなので、子どもたちがお金について考えるには、とても良いテーマだろう。

昨今出ている対立する2つの意見はこうだ。

1つは補助金を出すにせよ、財源がないことには何もできない。国が緊急事態にあるので、補助金を先に出すのは構わないが、このツケは将来世代に対して増税で賄わないといけない。

もう1つは、日本は独自の通貨(日本円)を発行できるのだから、国の借金を気にする必要はない。なぜ、財源が必要と言って増税をしようとするのか。

子どもと話すときは、両方の意見をあらかじめ共有したうえで、それぞれの意見について賛成できる部分と反対する部分を取り上げ、その根拠を一次情報や過去の出来事などと一緒に説明してあげるのがいいだろう。

実際に、この話を大学生としたときは、第二次世界大戦後からの日本の歴史や、そもそものお金の歴史などにまで話が広がり、ただお金の勉強をするだけではなく、歴史や公民などの社会の勉強にもなったという意見も多かった。

Stay homeの機会を活用して、ニュースで飛び交う言葉を切り口にしながらお金について話し合ってみるのも、子どもたちの成長につながるのではないだろうか。

文=森永康平

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