新型コロナと人類は「ダンス」で共存? 40カ国語に訳された米対策論文のシナリオ

「コロナウィルス感染者は他の人をどのように感染させるか」を示したグラフ(Tomas Pueyo)


どれくらいの接触者を追跡する必要があるか?


以前に私は、接触者の少なくとも60%を追跡し、それらをすぐに隔離して、実効再生産数(R=1人の感染者が何人に感染させるかの数値)を大幅に削減したいと考えた論文記事を発表した。しかし、その記事では、R0(=誰も免疫がなく、何の対策も講じられない状態での再生産数)を「2.5」と想定していた。しかし、もしこの想定が間違っていたとしたら?

この記事ではその点について考察しようと思う。

異なるR0を用い、「Rを1未満にするために追跡する必要のある接触者の割合」を割り出してみた。下図の各線は、R0を1.5(赤い線)、2.5(灰色の線)、および3.5(茶色の線)とした場合を示す。



図23:感染率(実効再生産数)を1.0以下にするためには、接触者をどの程度の割合、追跡調査する必要があるか?

横軸は「接触者のうち追跡された比率」を示し、縦軸は「Rへの影響」を示す。

一番上の茶色の線、すなわちR0=3.5の場合を見てみよう。何もしなければ感染率は3に近くなり、1人が他の3人に感染させることになる(3.5になっていないのは、感染者の一部隔離を想定しているため)。そしてより多くの接触者が追跡および隔離されるにつれて、Rは低下していく。

接触者のおおよそ90%を追跡できれば━━


接触者のおおよそ90%が追跡された段階で、この茶色の線は波線「1」を越えて下がっている。つまり、新型コロナの拡散を食い止めるためには、接触者の90%を追跡し、手を打つ必要があるのだ。うまくできさえすれば、この措置だけでも感染拡大を止めることができる。

しかも、完全には実行できなくても、この対策はある程度役に立つ。茶色の折れ線には、うすい茶色で少し幅が設けられている。これはデータが不足しているため、ある程度が推測数値になっているからだ。つまり、接触者の90%を追跡してもRは1.5か0.5にしか下がらないかもしれないが、明らかにRの大幅低下には有効だ。

R0=3.5ではなく、R0=2.5(灰色の線)の場合を見れば、感染者の70%を特定するだけで伝染病の流行を食い止めることができる。

感染者1人につき、20〜30人の接触者追跡が必要


これらの数値を常に念頭に置こう。こういったデータに基づき、接触者の70%から90%を可能な限りすばやく追跡することで、流行の蔓延を減らすうえで可能な限り大きなインパクトを与えるべきなのだ。

ある論文によると、これは感染者1人につき約20〜30人の接触者を追跡することに相当する。

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構成・編集=石井節子

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