2020年3月、ANRIは“withコロナ時代”の新たな投資スタイルとして、即決投資プログラム「ソクダン」を発表。これは、バリュエーション3億円までのシード投資で、持ち分10%以上の出資であれば1営業日以内に投資判断を回答するというもの。現在180名以上の起業家から応募があり、第一号案件としてキララボへの投資も決定した。
ANRIの動きは、これだけにとどまらない。翌4月には、オンライン完結型投資もスタート。「直接会ったことがない起業家」への投資を始めていくことにした。
一般的な投資判断においては、事業内容に加えて、人柄を重視し、「同じ船に乗れるかどうか」を検討。オンライン完結型投資は、これまで重要だと言われてきたステップを省くと宣言したに等しいが、ANRIはこの難しさにどう向き合うつもりだろうか。
ANRI代表の佐俣アンリに話を聞くと、「起業家以上に困難な状況を楽しむ」ことへの覚悟が見えてきた──。
すべては、投資を止めないための決断
大前提として、シード投資はリターンが出るまで時間がかかる。ANRIでも、1号ファンドで投資した18社のうち、8年が経った今では9社は残っているという。
「景気の循環は7〜8年サイクル。さらに言うと、シード投資はマクロ経済と連動しています。本来ならば逆相関が理想なのですが、なぜか相関しているんですよね(笑)。でも、本当に起業したい人たちにとって、好景気も不景気も関係ない。だからこそ僕ら投資家は、一定ペースで投資し続けることが大事なんです」(佐俣)
即決投資プログラム「ソクダン」、そしてオンライン完結型投資をスタートさせたのは、VCとして投資を止めないための決断だった。
「ANRIでは、投資判断は早ければ1日で回答します、逆に長いときは技術系事業であれば基礎研究が進むまで3〜4年ほどタイミングを待つこともあります。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって一般的に人と会えなくなってから2カ月以上が経ちますが、このままだとANRIでも投資の新規検討ができなくなる。それだけは、どうしても阻止したかったんです。
また、今の状況では銀行も新型コロナウイルス関係以外の融資が難しくなっています。つまり、今すぐ起業することを支える金融ソリューションが失われつつある。その解決策をつくるのも、僕らの使命だと思いました」(佐俣)