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2020.05.16

米旅行誌、コロナ流行下で「ホットリスト」発表の理由

Getty Images

米旅行誌コンデナスト・トラベラー(Condé Nast Traveler)は先週、世界各国で新たにオープンした高級ホテルやクルーズを厳選した2020年版「ホットリスト」を発表した。

今年のリストには、2019年2月末から今年の2月末までの間にオープン・就航したホテル76件と船10隻が選出された。同誌は毎年、丸1年をかけて400を超えるホテルや船を一つ一つ実際に体験し、リストに入れるものを絞り込んでいる。

ホットリストの発表は旅行愛好家や旅行業界関係者が注目するものだが、今年は少し事情が違っていた。同誌は過去24年にわたり同リストを発表してきたが、感染症のパンデミック(世界的大流行)が発生し、大半の人が旅をしていない中での発表は今年が初めてだ。

同誌の旅行ニュース編集長、エリン・フロリオは、読者には次の旅行計画にホットリストを活用することを勧めるとしつつも、「リストは前年の出来事をたたえるものだ」と説明。現時点で旅に出ることを推奨しているのではなく、過去1年間で最も優れたホテルやクルーズを表彰することが目的であり、「やめてしまうのはフェアではないと思った」と続けた。

同誌の米編集者、ジェシー・アシュロックはプレスリリースで「コンデナスト・トラベラーは、新型コロナウイルスのパンデミックで影響を受けている全ての企業や観光地、個人に思いを寄せている」と表明。「私たちは、多大な影響を受けた業界に注目の場を与えられること、そして観光業が繁栄し、今の事態を誰も予測していなかった過去1年間で同誌編集者らの心を捉えた施設や船を表彰できることを、光栄に思っている」と述べている。

新型コロナウイルスが落ち着いたら、人々はこうしたホテルやクルーズを実際に体験したいと思うだろう。その時には、旅はどのようになっているだろうか? フロリオは現段階ではっきりした答えは出せないと認めつつも、交通機関でより多くの医療関係者が配置されたり、検温が義務化されたりする可能性があるとみている。旅は今までと違ったものに見えるかもしれないが、それは必ずしも悪いことではない。

「物事のやり方が少し変化するかもしれないが、こうした変化はすべて業界への信頼を育てるためのもので、必ずしも悪いことだとは思わない」とフロリオ。「私は旅行業会が、現状を切り抜けるために素晴らしい取り組みをしてきたと考えている。消費者が今一番求めているものは信頼だ。安心感を求めていて、旅行が再び可能になった時に、自信を持って旅先を決められるようになりたいと思っている」

今はひとまず、再び安全に旅ができるようになったときに参照するものとして、ホットリストをしまっておこう。フロリオは「前向きな気持ちを維持することが重要」と述べ、「業界をたたえ、次の旅先を夢見ることは、気持ちが良いものだ」と述べた。

編集=遠藤宗生

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