2〜3分で機内の空気は入れ替わる。運航乗務員が機内の空気循環の仕組みを解説

新型コロナウイルスの感染拡大により、衛生管理の徹底が求められておりますが、飛行機の中の安全性はどうなっているのでしょうか? 現役パイロットが飛行機内の空気循環の仕組みを解説します。


こんにちは。JALグループの翼、J-AIRでエンブラエル170/190型機の機長をしております秋田です。リージョナルジェット機で大阪国際(伊丹)空港をベースに、全国の地域と地域を結ぶ使命感を持ってフライトしております。

先日友人から「今度飛行機に乗るんだけど機内の環境って安全なの?」と質問を受けました。新型コロナウイルスで日々不安な中でも、お仕事や移動手段として航空機にご搭乗くださる方々に少しでもご安心いただきたいと思い、最近は上空でのアナウンス時に、機内空調システムと機内空気の清潔さを加えています。皆さまにもこの場をお借りして、少しマニアックなお話をさせていただきます。



航空機は気圧の低い高々度(8000メートルから10000メートルくらいまでの高さ)を飛行するため、機内をなるべく地上環境に近づけるため与圧と言われる圧力をかけた状態で飛行しています。

また、客室内に送られる空気は外気を取り込むとともに、客室内で循環されている空気が客室内に入る前には、手術室でも使用されているヘパフィルターという高性能なフィルターを通しています。

このフィルターは、0.3μmのサイズの粒子に関して99.97%以上通さず、エンブラエルにはこれを2つ装備しております。また3000飛行時間以内の整備作業で定期的に新しいものに交換が行なわれています。JALグループの全てのジェット機にも、このヘパフィルターが装備されております。

お客さまの頭上付近から出た空気は、足元にある排気口へと流れ、機内の空気は概ね2〜3分以内には全て入れ替わり、外部から取り入れた新鮮な空気が提供され続けています。

この2〜3分以内に全て入れ替わるその計算についてもご説明します。エンブラエル機のマニュアルには、1分間で74Kgの空気の供給性能を有していることが記載されております。これは、機内与圧が8000ftと仮定すると、1分間で体積では82.1立方メートルの空気を供給していることになります。一方エンブラエル170型機の機内の体積を半径1.5m長さ22mの円筒形とすると、約155立方メートルになり、空気供給量を考えると155÷82.1≒1.9分で機内のすべての空気が入れ替わることになります。



難しい内容もありましたが、機内の空気環境の良さにご安心いただけましたでしょうか?機内の空気は清潔に保たれていますのでどうぞご安心ください。

一方、現在客室乗務員の業務においては、感染予防対策としてマスクの使用や、お客さまとの接触軽減をするため、手袋を着用しドリンクサービスも一部簡略化しております。感染対策へのご理解を重ねましてお願い申し上げます。

J-AIRでは地域と地域を結ぶというJALグループでの重要な役割のもと、お客さまをはじめ貨物など物資輸送を迅速かつ円滑にすべく社会的責務を持って、社員一同日々の業務にあたっております。また、これまで以上に清掃が行き届くよう、清潔で快適な機内空間で皆さまをお迎えできますよう準備しております。

皆さまと直接お話しできる機会は少ないですが、アナウンスの声に気持ちと想いを込めて、安全で快適にお過ごしいただけますようこれからもフライトに努めてまいります。

機内の空気の清潔性についてはJALのホームページでも解説しています。


※JALより

現在、国際線・国内線の各運航にあたっては新型コロナウイルス肺炎の影響で一部運休・減便・時間変更を行っております。最新の情報は以下をご確認ください。
https://www.jal.co.jp/jp/ja/info/2020/other/200228/

新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応について、編集部からのお知らせ
https://ontrip.jal.co.jp/notify

文=OnTrip JAL

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