政治賭博は近年、人気が急増している。2016年の米大統領選は、英国での賭けの対象として同年2位、非スポーツ系イベントでは史上最大の人気を得た。
今年の米大統領選では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期まではドナルド・トランプ大統領再選の公算が大きかったため、賭けの大半は民主党の候補指名争いに向けられた。当初はサンダースが優勢だったものの、サウスカロライナ州の予備選挙とスーパーチューズデーで勢いを得たバイデンが逆転し、最終的には大半の候補者に致命傷を与えた。
忘れられていない、ある「候補者」
予測不可能な事態が起きない限り、今年の大統領選はトランプとバイデンの一騎打ちとなることは確実だ。賭けの世界でもトランプ大統領勝利の見方は今も強く、オッズはマイナス120(120ドルを賭けても100ドルしか得られない)で、プラス135(100ドルを賭ければ135ドルが得られる)のバイデンを下回っている。
バイデンとトランプのオッズが1カ月前の賭博開始時からあまり変わっていない一方で、大統領選勝利のオッズが1カ月間でプラス6000からプラス2000へと大きく変化した人物がいる。ヒラリー・クリントンだ。
こうした賭けでは、実際には競争に参加していない人が対象になることはよくあり、過去にはキム・カーダシアンやカニエ・ウェストが選挙賭博の対象となったこともある。
クリントンは大統領選出馬の意向はないとしているが、この大きな伸びはニューヨークのアンドルー・クオモ州知事が最近、市民と賭博者からの支持を上昇させたこととも類似している。
クリントンが民主党の大統領候補として指名を受けるオッズは8/1(1ドル賭けるごとに8ドルの利益が得られる)、米大統領選で勝つオッズは22/1となっており、クリントンの人気上昇は民主党内に存在するバイデンへの不信感を浮き彫りにしている。賭博トレンドや世論調査は、新たな候補者が現れて停滞する現状を打開してほしいという願望を反映するのだ。