ビジネス

2020.05.18

ドローン関連のスタートアップを襲う「資金の枯渇」の恐怖

Getty Images

新型コロナウイルスの感染拡大は、ここ数年商用化が進むドローンなどの無人航空機システム(UAS:Unmanned Aircraft System)分野にも多大なダメージを与えそうだ。

イノベーティブな企業の間ではドローンを配送に活用し、物流プロセスでの人々の接触を削減しようとしている。米国のUPSはドラッグストアチェーンCVSと共同で、Matternet社のドローンで処方薬を運ぼうとしている。

中国のDJIのドローンは、深センでの消毒作業に用いられ300万平方メートル及ぶエリアをウイルスから遠ざけている。アフリカ大陸のガーナでは、米国のスタートアップZiplineの救命ドローンが、輸血用の血液を運んでおり、米国でも同じ試みを展開する計画だ。

これらのプロジェクトは一定の成果をあげているものの、ドローンの商用利用は今後、大きな壁に直面する見通しだ。小規模なスタートアップは資金調達に苦戦し、最大の顧客である石油や天然ガスなどのエネルギー業界は、景気減速に直面している。

さらに、ドローンの普及を促すための、法整備も遅延している。米国のFAA(連邦航空局)は現在、テストサイトを閉鎖しており、ドローン関連のルール作りは大幅に遅延する見通しだ。これにより、スタートアップの資金調達に甚大な影響が及ぶことになる。

調査企業Teal Groupのデータでは、ドローン関連企業の資金調達額は2012年にわずか2500万ドルだったが、2017年には5億4800万ドル(約588億円)まで膨らんだ。その後の3年間も投資額の増加は続いたが、この分野への資金流入は間もなく枯渇する見通しだ。

投資家らは現在、短期間でリターンが見込める分野に資金を移転させており、ドローン関連の小規模企業の資金調達は難しい。パンデミックの以前から、複数のスタートアップが事業を停止しており、2018年にはドローンのデータを解析するAirwareが廃業したのに続いて、2019年には米軍にドローン技術を提供していたアリア・インサイツ(元CyPhy Works)が他社に事業を売却した。

ドローン関連のスタートアップにとって、今後最大の市場として期待されるのが、エネルギー分野や建設分野だが、この領域は今後、不況の波に直面しそうだ。エネルギー分野は原油価格の値下がりや、利益率の低下により大幅なコスト削減を行っている。

ホテルや小売業も景気減速に襲われ、建設分野も事業規模を大幅に縮小しつつある。

一方でここ数年、ドローン活用が相次いだエンターテイメント分野も、大規模イベントの中止や延期が相次いでいる。

様々な悪条件が重なる中でドローン市場は統合化の波に襲われる見通しだ。豊富な資金を背景にした企業が、小規模な企業を買収する流れも加速するだろう。ドローン関連のスタートアップは時代の荒波の中でサバイブすることが求められている。

編集=上田裕資

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