賛否両論、グレタvsムニューシン財務長官


これまでは、直接的に温暖化ガス排出量を直接規制(違反国には罰則)しようとしてきた。京都議定書もパリ協定も、単純化して言うと、数量規制の考え方を踏襲している。しかし京都議定書の最大の欠陥は、世界最大の温暖化ガス排出国である米国と中国が参加していなかったことである。いくら欧州諸国と日本ががんばっても、他国にただ乗りされるだけである。

パリ協定では、米国と中国も含める形で、排出量の自主削減目標を決めて各国が努力する、という方式が取られた。目標が達成できなかった場合の罰則がない、各国の自主目標を足し合わせたもので、温暖化を抑制するのに十分ではない。さらにトランプ大統領のパリ協定離脱が加わって、いまやパリ協定で温暖化を防止できるとは考えられなくなっている。グレタさんが怒るのももっともだ。

炭素税の導入がより有効なのかもしれない。実は、現在でも、欧州諸国や日本で炭素税は導入されているのだが、税率が高くない。また、ある国の炭素税率と他国の炭素税率が異なると、やはりただ乗りの問題が生じる。また、化石燃料によって、温暖化ガスになる貢献度は異なる。

そこで、世界的に同率の税率で、燃料ごとの税率を温暖化ガス排出量に比例させて決めることで、世界的に公平な形で、温暖化ガス排出抑制のインセンティブ・メカニズムをつくることができるだろう。こういったことを、大学生になったグレタさんから発言してもらいたいものだ。

文=伊藤隆敏

この記事は 「Forbes JAPAN 4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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