ビジネス

2020.05.14

自腹で始めたメルマガ IT業界やスタートアップで働くヨーロッパ女性を虜にするまで

Femstreetを立ち上げた、セイラ・ヌーケルさん

多様性を社内外で大切にしている企業はそうでない企業より業績が良いことはすでに証明されている。しかし、女性や社会的マイノリティはスタートアップやベンチャーキャピタルの世界ではまだ圧倒的に少ない。2019年にヨーロッパのスタートアップに調達された資金の92%は男性だけで起業した企業に流れた。他国でもこの比率はほとんど変わらない。

その厳しい現状を変えようとしている重要人物の一人はセイラ・ヌーケルだ。

スタートアップ業界のダイバシティ不足を目の当たりにしたセイラは、2017年に“Femstreet”というIT業界やベンチャーキャピタルで働いている女性向けのメルマガを始めた。ドイツ出身で長年ロンドンに住んでいるセイラは今ベンチャーキャピタリストとしてのキャリアを歩みながら毎週日曜日にFemstreetを発行している。

現在7000人を超える読者がいるFemstreetの目的と女性がキャリアを積んでいくためのアドバイスを教えてもらった。

──ヌーケルさんのキャリアについて教えてください。ベンチャーキャピタルと起業家の世界に興味を持ったきっかけはなんでしたか。

大学でビジネスと金融を専攻して、卒業後2年間アセット・マネジメント業界で働きました。ある日、スタートアップのための格付け会社を立ち上げたフランス人の起業家と知り合いになりました。とても面白い発想だな、と思ったので転職をしてその会社の最初の社員になりました。その会社に結局3年いました。

その会社で働いていたとき、200人近くの起業家に会いましたが、女性起業家はその200人の中のわずか数人でした。

2017年当時、IT業界で働く大変さ、起業する大変さを赤裸々に語る女性たちがアメリカで少しずつ増えてきていました。当時私は、Strictly VCのような投資や起業について発信しているいろんなメルマガを読んでいました。いいコンテンツがたくさんありましたが、男性の視点からのものばかりで、起業する女性、スタートアップに投資する女性についての知識を共有しているメルマガは一つもありませんでした。

だから私は、自分で作ることにしました。

今振り返ってみると、私は子供の時からブログを書いたり、ネット上にいろんなコンテンツをあげたりするのが好きでした。自分でメルマガを始めるのは自然なことで、抵抗はありませんでした。

メルマガを発行したことで、読者との出会いを通じ、ベンチャーキャピタルやスタートアップ業界とのネットワークが広がりました。そして、私自身もベンチャー業界で働くことになり、最初はロンドンでBacked VCというシードステージ(事業開始すぐ)のスタートアップに投資するファンドに入社しました。その後、B2B専門のファンドであるDawnに転職しました。
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文=エリー・ウォーノック

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