フォーブス ジャパン編集部 エディター

バーのオーナーとフォトグラファー。全く異なる業種の2人だが、とある共通点がある。それは「人と向き合って、サービスを提供する」ということだ。

バーはお酒を提供し、話しながらお客さんを楽しませる。フォトグラファーは撮影を通じて、人の魅力を引き出す。両者が提供する価値は今まで“善”とされてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、緊急事態宣言の発令によって一転。対面することは“悪”とされ、休業を余儀なくされている。

そうした中、さまざまな媒体で活躍するフォトグラファーの小田駿一が写真集「Night Order」の発行を通して飲食店を支援するプロジェクトを行っている。5月4日に1カ月延長されることが発表された緊急事態宣言。依然、先行きが不透明な状況が続く。

痺れを切らした人は営業を開始したり、続けていくモチベーションを失ってしまった人は閉店を決めたりしている。この状況を飲食店業界の人は、どう見ているのか。そして今後のことをどう考えているのか。上記のプロジェクトに協力している「BAR トースト」のオーナー・佐伯貴史に小田が話を聞いた。

「話して、楽しむ」ことが“悪”とされる悲しい世の中


小田:4月7日に緊急事態宣言が発令されて、5月4日には1カ月の延長が発表されました。厳しいと思いますが、お店の状況はいかがですか?

佐伯:そうですね……。いまは自粛や協力、我慢といった正義感溢れる言葉が飛び交っていますが、心の中ではみんな「コロナのバカ野郎」と思っているのが正直なところだと思うんです。怒りや落胆、諦めが本当の気持ちだと思いますし、東京五輪を目前にして感染症のパンデミックが発生するなんて誰も想像できなかったと思います。

BAR トーストの周りはIT系の会社が多いのですが、初期段階からリモートワークに移行したこともあり、夜に街で人を見かけることは早々になくなりました。本来、3月や4月は歓送迎会の時期で忙しいはずなんですけど、団体客が来なくなり、ソファ席も埋まらなくなりました。バーはカウンターに立って、お客さんにお酒を提供し、お喋りをしながら楽しんでいただくのが仕事ですが、今の世の中はそれが「悪」とされてしまう。こんなに悲しいことはないですね。

小田:実際、いつ頃から影響が出始めましたか?

佐伯:3月半ば頃ですかね。3月頭に大きな貸し切りが2件入っていたのですが、それもキャンセルになり、その頃から団体のお客さんは一切来なくなりました。

歓送迎会の需要がなくなったことも大きいですが、大手企業が4人以上のミーティングを禁止したことも大きかったのかなと思います。店によって違いはありますが、基本的にバーって先輩や上司に連れてきてもらい、若い子たちはそこで飲み方を覚えるものじゃないですか。それが、リモートワークに移行し、複数人でのミーティングも禁止になったことで飲み会の数が減っていった。その結果、3月からどんどん売上が落ちていきました。

文=新國翔大 写真=小田駿一

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