中学生が東大教授に直撃「ブロックチェーンは世界共通インフラになるか」

(写真左から)渋谷教育学園渋谷中学校3年生(取材当時)坂本 創さん、吉本誠之輔さん、上島玲香さん、東京大学生産技術研究所 松浦幹太教授、清水美那さん


松浦:セキュリティ分野でよく起きる誤解として、「悪いことをされるんじゃないかという不安があるならば、秘密にすればいいじゃないか」があります。そうすれば悪者も、攻撃したい相手がよくわからないから攻撃しにくいんじゃないかと。

ただしそれをしてしまうと、「共通化」をものすごくしづらくなるわけです。今ブロックチェーンの独自の仕組みを作ろうとする人たちの中には、残念ながらそういうことがわかっていない人が多い。

吉本:共通化の大事さが理解されていない。

松浦:そうです。共通化した方がいい側面は実に多い。たとえば、ものの欠点は、実は作った人にはわかりにくい、だから、作った人が自分で安全性評価をすると、甘くなりがちなんです。そうではなくて、作った仕組みはこうです、と正々堂々と公開して、よってたかって叩いてもらった方が、圧倒的に正しい評価ができる。

「戦時」、暗号化技術は究極に標準化される




たとえば、みなさんが使うインターネット上でのパスワード。その暗号化のアルゴリズムは完全に公開されている。世界中の人がよってたかって厳しく評価して、ある程度安全性が証明された技術が使われているんです。

たとえば「戦争」で説明しましょう。戦争って一対一勝負っていうのは比較的少ないんですよね。複数の国や様々な組織団体が関係しているし、しかも何年かたって別の抗争になると、組み合わせが変わる。そんな環境でつど、秘密の技術を開発するのはものすごく難しい。通常開発に少なくとも10年はかかる。

だから、今われわれが普通にウェブブラウザで使っているような技術、アルゴリズムと同じ暗号技術が使われるんです。ただ、強度を上げるためにスペックをちょっと変える。鍵の長さだけ長くしたり。

坂本:共通の技術を使うのか……。

松浦:共通化が必ずしも荒唐無稽な話ではなく、ブロックチェーンの世界でも十分に起こりうることだ、というのがわかるでしょう? ただ現時点では、「ブロックチェーンを使っています」と宣伝している企業がみんな同じ技術を使っているか、というとそうではない。



清水:暗号通貨に関しての話なんですが、1800年代のアメリカでは、もともとは何千種類の通貨を市民それぞれが自己管理していたのに、南北戦争が起きて、国にお金が必要になったから、国が管理するようになったんですよね。それって今のブロックチェーンと似たような現象だと思うんです、自分たちでやろうという意識が。

現代でも、戦争とか、自然災害とかによってまた、国が管理する状態に戻ると思いますか?
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構成・文=石井節子 写真=帆足宗洋

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