中学生が東大教授に直撃「ブロックチェーンは世界共通インフラになるか」

(写真左から)渋谷教育学園渋谷中学校3年生(取材当時)坂本 創さん、吉本誠之輔さん、上島玲香さん、東京大学生産技術研究所 松浦幹太教授、清水美那さん

人類の歴史上、暗号化技術は「戦時」に発達・進化を遂げてきた。現在のようなコロナ禍の「有事」にも、究極に進化する可能性があるのかもしれない。

たとえば、暗号化技術の一つである「ブロックチェーン」。だがこの言葉を聞いて、果たしてまずは何を思うだろうか。「新種の電子マネー」? フィンテックの元になるテクノロジー?

今や多くの関連企業が乱立し、応用分野も広がっている。昨今では「仮想通貨流出」のネガティブな情報でも世間はにぎにぎしい。

たとえばいざ職場で上司から、「ブロックチェーンの現状実用度合いやブロックチェーンを使ってできること、あるいは近将来の課題を説明して」と言われたとき、すらすらと説明できるだろうか?

「ブロックチェーン」はある意味、現代人の教養の鬼門のひとつともいえるかもしれない。

Forbes JAPANではこのテーマについて、中学3年生4名の「取材班」に、該当分野をリードする研究者への取材をしてもらった。取材に応えるのは、暗号と情報セキュリティの一人者であり、自らの研究センターで日本銀行とともに、金融庁ほか主催の「フィンテックサミット」を後援する、東京大学生産技術研究所の松浦幹太教授である。

「取材班メンバー」はいずれも東京都の渋谷教育学園渋谷中学校3年生(取材当時)、坂本創さん、吉本誠之輔さん、清水美那さん、そして上島玲香さんだ。

今回はその「後編」。ブロックチェーンは、インターネットに比肩する「生活文化」たりうるのか──。

前編はこちら:「ブロックチェーン」とはそもそも何か? 中学生が東大の専門家に質問したら


サイバー空間だからこそ「汎用性」が重要


吉本:ブロックチェーンを「技術の集合体」として考えなければならないとすると、その分、内容も多岐にわたると思います。先述の「ビットコイン流出問題」が、技術全般を十分に理解しないうちにお金もうけを目的に手を付けたことが原因のひとつだとすると、ブロックチェーンを完全に理解してからじゃないと、安全に取り扱うのは難しいのでしょうか。普通のセキュリティを8割方理解して使うのと、ブロックチェーンの技術を半分くらい理解して使うのだったら、どちらの方が危ないでしょうか。

松浦:そうですね。まずはブロックチェーンどうこうの前に、世の中のIT教育自体のレベルを上げる必要があるんです。

しかしブロックチェーンをどこまで理解して使うべきかというのは、どのくらい技術が共通化されるかという点とも関わってきます。皆が独自なものでやりたいのであれば、それぞれの事業者が全部理解してやらないとできない。しかし、共通化して使える技術があって、その安全性が、広く評価され、信頼性を得ているのであれば、一定程度ブラックボックスにできるはずですよね。皆さんちなみに何年生?



吉本:中学3年生です。

松浦:そうすると、高校生になると物理を勉強しますね。ものがどうやって動くのか、力がどうやって伝わるのかという基礎的な学問ですけれども、そういう物理学を理解した人でなければ、自動車会社で働けないか?というと、そうではないですよね。

物理法則は世界共通です。ある国のある地域だけ、突然、物理法則が変わって、他の国で作った車がそこでだけは動きません、とか、そこでだけ事故を起こします、とかはありえないですよね。

しかし、サイバー空間の世界というのは、ゼロから人間が作っているものなので、きっちり共通化しているかどうかで全然話が違ってくるわけなんです。

坂本:どこかで不整合性が起きてくる。
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構成・文=石井節子 写真=帆足宗洋

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