たとえば、暗号化技術の一つである「ブロックチェーン」。だがこの言葉を聞いて、果たしてまずは何を思うだろうか。「新種の電子マネー」? フィンテックの元になるテクノロジー?
今や多くの関連企業が乱立し、応用分野も広がっている。昨今では「仮想通貨流出」のネガティブな情報でも世間はにぎにぎしい。
たとえば分散型台帳技術、分散型ネットワークであること、「ハッシュ値」でつなげられた一連のブロック列でデータの改ざんが困難であること、は言えても、いざ職場で上司から、「ブロックチェーンの現状実用度合いやブロックチェーンを使ってできること、あるいは近将来の課題を説明して」と言われたとき、すらすらと説明できるだろうか?
「ブロックチェーン」はある意味、現代人の教養の鬼門のひとつともいえるかもしれない。
Forbes JAPANではこのテーマについて、中学3年生4名の「取材班」に、該当分野をリードする研究者への取材をしてもらった。取材に応えるのは、暗号と情報セキュリティの第一人者であり、自らの研究センターで金融庁ほか主催の「フィンテックサミット」を後援する、東京大学生産技術研究所の松浦幹太教授である。
「取材班メンバー」はいずれも東京都の渋谷教育学園渋谷中学校3年生(取材当時)、坂本創さん、吉本誠之輔さん、清水美那さん、そして上島玲香さんだ。
後編はこちら 中学生が東大教授に直撃「ブロックチェーンは世界共通インフラになるか」
そもそも「ブロックチェーン」とは
吉本:今日のために少し勉強してみたのですが。ブロックチェーンは、資産みたいなものをデジタル上で交換、取引するためのシステムで、その取引情報を、政府とかに任せるんじゃなくって、みんなが持っているコンピューターひとつひとつに保存、バックアップしてもらうことで、コストを低くしたり、不正をしにくくしたりするっていうシステムなんだと思いました。
改めて先生にブロックチェーンとは何かをお伺いしたいです。
松浦:なるほど、よく勉強してきましたね。でも、その説明だと、ブロックチェーンが本質的にどういうメカニズムで動いているのか、の説明にはなっていないですね。
ブロックチェーンを本当に「ひとこと」で説明すれば、要するに「タイムスタンプ」なんです。
じゃあ、「タイムスタンプ」とはどういうことかというと、サイバー空間かリアル空間かは問わず、人間が、あるいは人間に限らず他の生物でもいい、究極は生物でさえなくてもいい、「何か」が動いた、何か現象が起きた時に、「何年何月何日の何時何分何秒に起きたか」を正確に記録に残すこと。まさに、その「タイムスタンプ」の機能を果たすのがブロックチェーンなんですね。
そして、それができることで実現可能になるサービスがたくさんあるわけです。われわれは、光のスピードで動いている乗り物にでも乗っていない限り、同じ時間の動きの中で暮らしているわけですから。
したがって、あなた方の今回の取材のキーワードが、暗号通貨とか仮想通貨とかビットコインとかそういう名前ではなくて、「さまざまな技術の集合体」であるブロックチェーンだというのは、けっこう意味が深いことなんです。
たとえば、もう知っているかもしれないけれど、ブロックチェーンの応用って決してビットコインだけではないんです。
吉本:はい、暗号通貨だけでもない。