では、アマゾン流の「リモート環境下でスピードを緩めないポイント」とは一体何なのか?
1. 業務を数値で表現する
アマゾンはしばしば、「メトリックス文化」と評される。メトリックスとは、一般的にはKPI(=Key Performance Indicator:重要経営評価指標)と表現される。要は、会社のパフォーマンスを数値で表現しているということだ。これをいったん作ってしまえば、逐一の報告の必要もなく、現状把握ができる。今週は目標を達成したのか未達成なのか。未達成度は問題があるレベルか、それとも看過できる範囲か、など。これが一目瞭然に判断できるようになる。
「エンジンを分解」する必要はない
私がアマゾン勤務時代、八千代フルフィルメントセンター(FC)のセンター長を務めていた時のことだ。この時期、上司が実際に倉庫を訪れて状況確認をすることはほとんどなかった。初めてリモート環境に置かれた私としてはやや心細く、具体的に指摘をしてくれないかな、という欲求もないわけではなかった。
米アマゾンのフルフィルメントセンター(FC)
ある日、会議で上司のオフィスを訪れた際、少しだけその点を打ち明けてみた。上司が言ったのは、「私が何も言わないのは、倉庫のメトリックスを見ていればお前が上手くやっていることがわかるからだよ。車に乗っている時、調子よく動いているエンジンをわざわざ分解して確認したりしないだろう?」だったのだ。
つまり、様々な「センサー」から、「今エンジンがどのような状況か」の報告は自動的に上がっている。その数値にさえ問題がなければ、車を止めて「エンジンを確認」する必要はない、というのである。この言葉はそれ以降、私が倉庫ネットワークを管理するうえで、非常に大事な考え方の一つとなった。
「例の件、どうなっている?」「順調です!」は致命的
「データは嘘をつかないし、客観的な状況を示してくれる」という点で、数値管理は重要だ。
上司の「例の件、どうなっている?」という質問に、「順調です!」と答えるのは、オフィスでよく聞かれる会話だ。オフィス環境だと、普段の会話や部下の行動から、「何となく」状況がつかめるので機能するケースもあるが、リモートだと、これは致命的である。
順調というのは「どれくらい」順調なのか、計画に対して遅れはないのか、先んじて進んでいるのか。何か想定外のことが起きていないのか、といったことは、この会話からはまったく読み取ることはできない。
しかし、計画数に対しての実績やスケジュールの達成度などがあれば、どれだけ順調なのかは一目瞭然である。数値は嘘をつかないのである。