5G時代の到来と通信インフラを守るAIの登場

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リモートワークやオンライン会議が激増することで、通信インフラのキャパシティ不足やネットワーク障害への懸念が高まっている。そんななか、さらなるデータ量の増加や負担を招く全国一斉オンライン授業などを実施している韓国では、その裏にある人工知能(AI)やビッグデータを用いた通信インフラ管理の手法に注目が集まり始めている。

従来、ネットワーク障害が発生した際にアラートリストをチェック・分析するのは人間の専門家の役割だった。しかし、人間が原因を特定し問題を解決するためには、短くて数十分、長くて数時間の時間を要していた。

そこで、韓国の通信キャリア大手各社は端末や基地局、伝送網などで発生するデータを、コンピュータ上で仮想化。AI分析ツールを導入することで、原因特定の時間を大幅に短縮することに成功しているという。韓国通信大手が公表しているAIベースの通信ネットワーク管理ソリューションとしては、「TANGO」(SKテレコム)、「Dr.Lauren」(KT)などがある。これらは、トラフィックに異常があると、障害要因とともに普及作業に必要な事項まで詳細に管理者に通知してくれる。

日本に先駆けて5Gサービスの商用化が始まった韓国では、今後、ますますこの手のソリューションの重要性が増していくと考えられている。というのも、5Gは前世代の通信規格に比べて、高速・大容量・低遅延の通信を可能にする反面、その電波の特性上、障害物を通過する能力が弱く、基地局1台あたりのカバー範囲が狭い。結果、数倍の数の小型の基地局をいたるところに設置する必要があるため、より高い水準のトラフィック管理技術が求められるからだ。

なお、韓国では仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の技術も、基地局管理のタスクに導入され始めている。例えばKTは、5Gの基地局を仮想化する「基地局ツイン」というソリューションを開発。「デジタルツイン」の基地局バージョンとして、エンジニアが屋上など基地局を設置する場所に登らずとも、基地局の角度や高さを把握できる仕組みとなっている。

SKテレコムは、夏頃までに音声AIアシスタントを基地局に適用する計画も発表している。これは、AIが音声を通じてエンジニアにネットワーク異常や作業内容を知らせてくれるというものだ。

今後、日本や世界では、より高度なデジタル通信の需要がさらに高まっていくだろう。その舞台裏を守るAIの活躍にも注目していきたい。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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