新型ウイルス流行を終息させるために必要なワクチンや治療法、検査キットの開発に取り組む企業の株価は、ここ2カ月ほどで急上昇しており、それに伴い新たなビリオネア(保有資産額が10億ドル以上の富豪)が1人誕生したほか、少なくとも9人のビリオネアが保有資産を大幅に増やした。
新たにビリオネアの仲間入りを果たしたのは、米マサチューセッツ州に本社を置くモデルナのステファヌ・バンセル最高経営責任者(CEO)だ。同社は3月16日、新型ウイルスで初となるワクチン臨床試験をシアトルで開始した。バンセルの保有資産はWHOのパンデミック宣言時、7億2000万ドルだったが、モデルナ株はその後103%上昇し、バンセルの資産額を15億ドル(約1600億円)に押し上げた。
バンセルの保有資産額は4月2日、モデルナがワクチンの第2相試験開始を計画しているとのニュースを受けて同社株が上昇したことにより、10億ドルを突破した。資産額の増加率は、一連の富豪の中で最も高い109%だ。増加率が2番目に高かったのは連続起業家グスターボ・デネグリの32%(保有資産額11億ドル)で、伊バイオテクノロジー企業ディアソリンの株式の45%を保有していることで資産を大幅に増やした。
資産の増加額が最も多かったのは、バンセルが2011年までCEOを務めていた診断製品メーカー、ビオメリューを創業した仏富豪アラン・メリューと、韓国のバイオ製薬会社セルトリオンのソ・ジョンジン会長の2人。いずれも3月11日から資産を約15億ドル増加させた。ビオメリューとディアソリンの両社は3月下旬に新型ウイルスの診断キットを発売しており、新型ウイルスの検査体制強化において重要な役割を果たしている。