米国で上場する中国テック企業が「香港で重複上場」を狙う理由

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米国の株式市場に上場する中国企業の間で、アリババの例にならい香港市場への重複上場を検討するケースが増えている。しかし、アリババのように巨額の資金調達を実現できるかどうかは不透明だ。

アリババは昨年11月に香港市場に上場し、130億ドル(約1.4兆円)を調達した。これは、香港では過去9年間で最大規模だ。アリババのライバルである「JD.com」とオンラインゲーム大手「NetEase」も香港取引所への重複上場を計画している。

報道によると、両社は既に上場申請を済ませ、投資銀行と手続きを進めているという。上場時期や売り出し規模はまだ決まっていないが、両社にとって重複上場の目的は資金調達にとどまらない。背景には、中国政府の思惑があると考えられる。

中国政府は、自国を代表するテック企業が海外市場に上場していることを快く思っていなかったとされる。さらに、ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)の粉飾スキャンダルを受け、米規制当局は中国企業の情報開示リスクについて、強く警鐘を鳴らしている。上海の中欧国際工商学院(CEIBS)のOliver Rui教授によると、米市場に上場する中国企業に対する売り圧力が強まっており、時価総額は軒並み下落傾向にあるという。

「ラッキンコーヒーの事件を受け、SEC(米国証券取引委員会)は中国企業に対する規制を強化するだろう。このため、米市場に上場する中国企業が母国の市場に重複上場する傾向が強まっている」とRuiは話す。

しかし、中国での重複上場を目指す企業にとっては、マーケットから高い評価を得られるかが大きな課題だ。アリババの場合、同社のビジネスモデルは母国の投資家から高く評価されており、香港市場への上場初日は、取引開始から1時間で株価は7%上昇した。

しかし、香港本拠のAmple CapitalのAlex Wongによると、他の中国企業がアリババのように高く評価される可能性は低い。香港取引所は2018年にインターネットやテクノロジー企業の上場基準を緩和し、投資家らはこれらの分野の企業に高い関心を示しているものの、重複上場で大成功を収めるケースは限られている。

新型コロナウイルスの感染拡大が世界中の株式市場に打撃を与える中、香港ハンセン株価指数は今年に入って16%下落した。また、中国の1~3月GDPは前年同期比マイナス6.8%となり、回復には想定よりも長い時間を要しそうだ。
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編集=上田裕資

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