地球にとっては人間なんてウイルスみたいなもの?

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コロナ感染防止のため他の人との距離を取って!と周りとの間を2mほどあける「社会的距離」が推奨されている。そう言われても毎回物差しで測るわけにもいかないので、その距離を「1ツナ」とか「1パンダ」とか「1ビートルズ」(アビイ・ロードのジャケットで横断歩道を渡る4人の全長)などと、ユーモラスに喩えた目安がニュースで紹介されていた。

昔は距離を定めるために、もっぱら人の身体を基準として、手の指の長さや歩幅などから作られた単位が用いられてきたものだ。しかし、それでは個体差もあり不正確で、近代になって客観的な物理的現象を元に標準値が制定され、それが工業化や国際的な取引を促す要因になり、現在ではメートルとキログラムや秒を基準にした国際単位系(SI)が広く用いられている。

人間こそ万物の尺度


われわれはメートルが世界標準になっていると思っているが、どういうわけか世界でアメリカとミャンマーとリベリアだけが公式には採用しておらず、アメリカではいまだにヤードやポンドなどの旧来の慣用単位が広く用いられている。

政府機関などはさすがにメートル法を採用しているが、NASAの下請け業者が誤って慣用単位を使っていたため、1998年に火星探査機が計算違いで低い軌道を飛んで墜落するという椿事が発生した。テクノロジーでグローバルスタンダードを標榜する国が、こんなところで意外に時代に逆行する保守的な側面を暴露していることに驚かされる。

そのアメリカにはもっと奇妙な、スムート(smoot)という長さの単位があるのをご存知だろうか? それも66~67インチ(1.67m~1.70m)と幅のあるかなりアバウトな長さなのだが、グーグルも地図アプリで実際に使っていた由緒ある単位だ。

実はこのスムートは、1958年10月にMITで作られた比較的新しいもので、なんとオリバー・スムートという学生の実際の身長から作られたものなのだ。悪友たちが、グループの中で一番背が低いスムートに、「おまえの身長を世界標準とする!」と宣言して、彼の体を物差しにして、ボストンとケンブリッジの間のチャールズ川にかかるハーバード橋に横たえて、端から端まで何度も移動しながら、10スムートごとに目盛りを付け、結局渡り切った長さは364.4スムートと耳1つ分という結果になった。
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文=服部 桂

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