コロナ禍でもテレワークできない旧メディア。5G活用で今こそ大変革を

連載「#読む5G」サムネイルデザイン=高田尚弥

新型コロナウイルス対策による緊急事態宣言下だけに「メディアもテレワーク中」と思われている方も多いのではないだろうか。

デジタル・メディアは確かにそのとおりだろう。しかしテレビ、新聞、雑誌、ラジオの「4マス」つまり旧メディアは、いまだに人海戦術から免れない。

「本日は自宅よりお届けしています」とビデオ・チャット形式のテレビ出演者こそ目につくものの、実際にオンエアを担当する番組スタッフは、現場に配置されている。ラジオも同様だ。テレビ朝日で新型コロナウイルス感染者5人が確認された件は、こうした実情を如実に物語っている。

「誰も救わない新聞事業」という見出し


紙媒体は、それに輪をかけ現場主義のままだ。

新聞は、編集局から入稿され整理部で組まれたデータが、各地の新聞印刷所に送信され、そこで人手により製版がなされ、昔ながらに輪転機が回り、刷り上がる。刷り上がった新聞はさらに人手により梱包され、トラックで販売所に輸送、販売所からスーパーカブにより各家庭に配達される。朝刊が明け方お手元に届くからには、新聞制作とその物流は不夜城さながら。テレワークからはほど遠い。

こうした労力を費やしつつ4マス、旧メディアの凋落は著しい。特に紙媒体の危機は叫ばれ続けすでに20年、日本の新聞広告費は2017年の5147億円から2019年には4547億円と、たった2年で600億円も吹き飛んだ。アメリカでは2000年の時点で600億ドルを超えていた新聞広告費は2018年、150億ドルまで目減り。逆に2010年に6億ドルだったモバイルメディアのそれは、2018年には700億ドルへと大躍進を遂げ、デジタル全体ではついに1兆ドルを超えた(米インターネット・アドバタイジング・ビューロー調べ)。いずれ、「マスメディア」はデジタル・メディアを指す時代がやって来るだろう。

新聞事業者は、アメリカにおいても数年前まで少々楽観視していた。インターネット事業者や通信会社が新聞事業を買収、各事業は継続されるだろうと予見されていたためだ。しかし昨年、アメリカのメディアに「誰も救わない新聞事業」という見出しが踊り、AT&Tなどの通信会社が紙媒体に興味を示さない現実を突きつけられた。

NTTドコモでも茶飲み話に「新聞社買収戦略はありか」と呟いたところ、「不採算部門が多い会社を今さら買う必要ありませんよ。記事だけ買ってくれば大丈夫ですから」と一笑に付された。

「記事だけ購入」、日本の新聞社はこの戦略の甘さが、今になって致命傷を広げている。米『ニューヨーク・タイムズ』の記事は本紙と同紙デジタル・サイトでのみ読むことができる。英米の旧メディアはほぼ同様のビジネスモデルだ。しかし、日本の新聞社の記事は、ヤフーニュースやLINEニュースなどのキューレション・メディアにてどこでも目を通すことができる。

前者はデジタルの購読モデルをレールに載せ、ひとつのビジネスモデルとして成立しつつある。これを踏襲しているのが日経新聞、日経本紙もしくはデジタル版を購読しなければ読むことができない。後者はどのドメインでも閲覧可能なため、広告資産価値を自社に集中させることも難しく、購読モデルの構築は不可能。コンテンツ・プロバイダーとなってしまった各紙が、ビジネスモデルの再構築に苦しんでいる要因だ。
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文=松永裕司

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