テクノロジー

2020.05.11 08:30

コロナ禍でもテレワークできない旧メディア。5G活用で今こそ大変革を

連載「#読む5G」サムネイルデザイン=高田尚弥


15年前、各大手新聞社のデジタル担当から「新聞はどうすべきか」と疑問を投げかけられ「ネット事業者への記事配信を打ち切ること」とささやいてきた。「MSN毎日インタラクティブ」を立ち上げた際も「他メディアに配信しない」包括契約が交渉条件のひとつに組み込まれていたほどだ。
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テクノロジー導入だけではない。新聞事業をどう継続するか


「5G+UGC+AI」の活用が、旧メディアの救世主となる可能性は前回示唆した通り。この20年間、新聞事業をどう継続して行くか、世界中のメディア関係者が、頭をひねり続けたが結局、解は生まれていない。だが、ここではあえてその具体策に切り込んでみたい。それには単なるテクノロジーの導入のみならず、上記の外部配信停止を含めたプラットフォームの見直しやメディア再編成までも求められる。

ひとつの策は5G端末を有効活用した「ワンソース・マルチユース」の徹底だ。高解像度カメラを内蔵した端末により、動画、音声、画像を記録、これを5G大容量通信網により集約、取材リソースを一本化し、雑誌、新聞、テレビ、そしてデジタルなどすべてのチャンネルへと配信する。これにUGCを上乗せし、コンテンツの多様性を補完すれば、バリエーションも保てる。

ワンソース・マルチユースの小規模モデルは、複数雑誌をかかえる大手出版社で昔から馴染みの手法だ。例えば滅多に取材日程をもらえないジャニーズの人気タレントなどを一回の取材で写真も原稿も押さえてしまい、同社の複数の雑誌向けに切り口を変え、「書き分け」掲載。今では同時に動画も収録しデジタル・メディアで配信している。
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#読む5G
ワンソース・マルチユースでコンテンツの多様性を補完できる。 (Shutterstock)

かつてテレビ朝日の買収案件で日本でもその名を取りざたされたメディア王、ルパート・マードックの「ニューズ・コーポレーション」は、日本のメディア経営者が指針として想像力を巡らせるべきモデルだろう。系列ごとにメディアを統合し、ワンソース・マルチユースを徹底すればコスト削減に直結する。

テレビ黎明期、各新聞社も出資し、現在のキー局が構成された。報道関連部署のみ、この系列ごとに統合してはいかがだろう。例えば読売新聞、日本テレビ、スポーツ報知はひと現場にひと取材チームを派遣、5G端末を駆使し、映像、画像、音声を収録、テキスト原稿をテレビ、新聞、スポーツ紙、そして各社のデジタル・メディアと書き分け、それぞれの素材をマルチユースする。

NHKが放送法の改定により、テレビ放送とデジタル配信を同時に行おうとした試みを、紙媒体も含め、系列ごとに束ねれば編集局側のコスト削減が進む。

「業界再編など不可能だ」と全否定する経営者は多いだろう。

かつて各新聞社は、販売局、販売店など独自の流通網を確保していた。しかし現在では、産経新聞が読売新聞や朝日新聞の販売網を通じ配達されているよう、今や社を横断し統合や再編促進は常識。これも数十年前なら、各社の経営者が「そんなことできるか」と目くじらを立てた事例だ。しかし、日経新聞が独自販売網に固執せず、あらかじめコストをかぶらなかった事実を新聞業界なら誰でも知るところだ。

5Gによるドラスティックな変革の提言は、関係者にとって夢想感を拭えないのだろう。
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文=松永裕司

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