フォックスコンは中国政府からの資金援助を受け、青島市に半導体のテスト工場を開設すると、台湾メディアが報道した。同社は中国での労働コストの上昇や、米中間の緊張の高まりを受けて、中国外への工場の移設を進めていたが、今回の動きはその流れに逆行するものだ。
背景には、新型コロナウイルスの感染拡大の脅威から中国がいち早く立ち直りつつあることがあげられる。さらに、中国人消費者は今後も電子デバイス分野の需要を牽引することが予想される。
フォックスコンは中国の主要なスマホメーカーを顧客に抱えており、IT都市として台頭する青島に拠点を置くことで、優秀な人材へのアクセスを確保できる。「新たな工場のキャパシティは中国国内の需要向けに用いられる」と、台北の投資コンサルティング企業Quantum Internationalの担当者は分析している。
パンデミックの発生以前から、フォックスコンは製造拠点の多様化を進め、インドやベトナム、米国のウィスコンシン州などで工場を開設したが、現在も組み立て作業の半分は中国で行っている。
調査企業IDCの予測では、世界におけるテクノロジー分野の支出は今年7%の減少になるが、中国での減少幅はわずか1%程度にとどまる見通しだ。フォックスコンは、ファーウェイやシャオミなどの中国の大手を顧客としている。
「中国のスマホメーカーは半導体領域に巨額の投資を行っており、ファーウェイは顧客と近い距離に拠点を構え、5Gテクノロジーの普及に備えている」とIDCのアナリストは述べた。中国はここ2年程度で、5G分野の市場リーダーとなることが期待されている。
フォックスコンの青島工場は、5G通信に用いられる半導体の組み立てやテストを行うことになる。さらに、AI(人工知能)向けの半導体の製造も行おうとしている。
青島にはGMや現代自動車も拠点を構えており、中国の家電メーカーのハイアールも本社を置いている。「青島にはテクノロジー分野の人材が豊富な点も、フォックスコンにとって魅力的だ」と、アナリストは分析している。