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新型コロナに挑むと覚悟を決める


3月上旬、私はあるインド人の起業家とやり取りをしていた。彼の名前はジョギンダ・タニケラ氏。前述のスタートアップ、パルス・アクティブ・ステーションズ・ネットワークのCEOだ。

実はそのころ、私はインドに赴き、彼を取材する予定を立てていた。しかし新型コロナの影響で雲行きが怪しくなり、やむなく渡航を断念したのだった。

「申し訳ないのですが、今回は取材を見合わせます」とお詫びのメールを送ったところ、すぐに彼から返事が返ってきた。そこには「早く事態が落ち着くことを願っています」という言葉とともに、次のようなことが書かれていた。

「実は今、インドの106都市でユーザーを調査し、状況をマッピングしようと考えています」

ユーザー調査? マッピング? そのときはまだ、私は彼の真意が掴めずにいた。

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Pulse Active Stations Network創業者でCEOのJoginder Tanikella氏

4月下旬に話を聞いてわかったのだが、私が取材の連絡をした3月上旬の時点で、彼はすでに「新型コロナウイルスに挑む」と覚悟を決めていたというのだ。

3月25日から始まるロックダウンの少し前には「これから危機的な事態が起きる」と察知し、社員のうち6人を自宅兼オフィスに呼び寄せた。デザイン担当、ソフトウェア開発者、ハードウェアのプロなど、それぞれが異なる技術力を持つ先鋭たちだ。

「医療テックとして、自分たちが貢献できることは何か」と、皆でアイデアを出し合うなかで、タニケラ氏たちは2つの取り組むべき課題に行き着いた。1つは、医療従事者の感染リスクを抑えつつ、個人防護服を着用しなくても新型コロナウイルスの検査ができるキオスクを開発することだった。

「防護服は高価なうえ、一度着用すると検査のシフトが終わるまで脱ぐことができず、利便性が高いとは言えません。医療従事者の健康を守りつつ、効率的に検査を進める方法はないかと考えました」

そして2つ目は、データの収集や分析を通じて、感染後に重症化するリスクが高い人をスクリーニングすることだったという。

「新型コロナ感染者のなかには、症状が出ず、入院や治療を必要としない人もいます。医療資源を効率的に利用するためには、どんな人を病院で治療すべきかを見極め、計画を立てる必要があります。それにはデータがとても役立つのです」

これらの課題を踏まえて開発したのが、冒頭の写真で紹介した新型コロナウイルス検査用キオスク「Pulse Anti-Covid Station(パルス・アンチコビッド・ステーション)」だったのだ。

文・写真=瀬戸久美子

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