ミラノでは、ロックダウンで人の移動が減少し、交通量が30%から75%減ったのに伴い、大気汚染レベルも軽減していた。世界全体でも、パンデミックにより、二酸化炭素排出量が史上最大の減少率となっている。
米ハーバード大学が2020年4月に実施した研究は、新型コロナウイルスで死に至る可能性と、過去に高レベルの大気汚染にさらされてきたことには関連性があると結論した。そして、効果が立証された治療法やワクチンがいまだ存在しないパンデミック後のニューノーマルにおいては、大気汚染が死亡要因になる可能性があると示唆した。こうしたことから、以前と同じ日常には戻りたくないと話す市民や市長がますます増えている。
少なくとも、パンデミックを大きな機会として、自動車ではなく人間の必要性を中心に都市を再考する動きが出ている。ここ数週間で、コロンビアのボゴタ、カナダのカルガリー、ドイツのケルン、米国のデンバーをはじめとした多くの都市で、街から自動車を締め出せば、歩行者が歩いたり運動をしたりするスペースが増えるという考え方が一層取り上げられるようになった。
カリフォルニア州オークランドは2020年4月11日、市内を走る道路の10%にあたる約120kmの道を、自動車が通行できないよう閉鎖した。カナダのバンクーバーなどでは、公園内道路の自動車通行がすでに禁止されている。
イタリアのミラノは、端から端までの距離が15kmにも満たない。人口約140万人のうち55%は公共交通機関を日常的に利用しており、住民の平均通勤距離はおよそ4kmにすぎない。同市は住民に対し、自動車には乗らず、歩行者専用区域を使って通勤するよう呼びかけている。しかし、ロックダウンの解除直後は、公共交通機関を避ける人が多くなると見られる。自動車以外の通勤手段を提供することは必須だ。
ミラノ市都市計画局の責任者ピエルフランチェスコ・マラン(Pierfrancesco Maran)は、同市が発表した計画について次のように述べた。
「今後数か月、あるいは数年にわたって、私たちはニューノーマルの時代を生きていくことになる。それを受け入れなくてはならない。その新たな日常生活になじんでいけるよう、私たちは適切な環境を作り出さなくてはならない。ロックダウンが解除される2020年5月には、ミラノだけでなく、イタリア、さらにはヨーロッパで、今後10年間の未来について決断が下されることになる。これまでは2030年に向けて計画を立てていた。しかし、いまや2020年が新しい局面だ。未来について考えるのではなく、現在を考えなくてはならない」