全部で__部門あるシェフ個人を対象にした賞では、大阪の「La Cime(ラ・シーム)の高田裕介氏が、シェフたちの投票によって選ばれる「シェフズ・チョイス賞」を受賞。また部門賞のカテゴリーでも、東京「été(エテ)」の庄司夏子氏が「アジアのベスト・パティシエ賞」、京都「菊乃井」の村田吉弘氏が「アイコン賞」を得た。
栄誉に輝いたシェフたちそれぞれが考えるガストロノミーとは。また、三者は新型コロナウイルス以後のレストラン業界をどう見るのか。
その土地で育まれた味覚を表現する
ラ・シームの高田裕介シェフが受賞した「シェフズ・チョイス賞」は、文字通り同業のシェフたちによって選ばれる賞のため、考え方によってはランキング以上の名誉と言われている。高田シェフがオーナーのラ・シームも、開業10年を迎えるが、昨年から順位を4つアップして第10位となり、ベスト10入りを果たした。
高田シェフは笑いながら、「インスタグラムでも積極的に発信したので、他のシェフたちにも、僕がサボってないってことが、わかってもらえたからかな」と受賞の理由を語る。
実際ラ・シームのインスタグラムのアカウントを見てみると、シェフ自身の画像はほとんど見当たらない。本人の存在はあくまでも目立たないようにしてある。代わりに、数日に1度のペースで投稿されているのがアーティスティックな新作料理の写真だが、これにも具体的な料理の説明はあまりない。
「どう見てもらいたいかについては意識して投稿していますが、とにかくなんの説明もなしに食べてもらい、美味しい料理と実感してほしい」とシェフは言う。店のメニューも然り。食材の名前が書いてあるだけだ。
「僕たちは、ゼロから何かを生み出しているわけではない。まず食材があって、自らの経験で育まれた味覚と、プロとしての20年間で集めてきた引き出しを通して表現するのが仕事なんです」