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「想定外」の研究


以下の図は、2020年1月に公表されたWEFのグローバル・リスク・ランドスケープであり、新型コロナウイルスのようなパンデミックリスクも当然対象となっている。昨今は、気候変動リスクへの認識バイアスもあってか、環境リスク群に対する注目が高いことがわかる。個人的には、世界“経済”フォーラムが調査したものであるにもかかわらず、経済リスクよりも、環境や社会や技術のリスクが驚異と評価されている点が興味深い。


図:グローバル・リスク・ランドスケープ 2020 出典:世界経済フォーラム グローバル・リスクレポート 2020

このように、限られたメンバーの間では、人類の英知や情報を結集し、グローバル・リスクの評価やシナリオ分析は実施されてきた。しかしながら、国内外を問わず、こうしたさまざまなリスクシナリオ(専門用語で「オール・ハザード」または単に「リスク」と言う)が、広く一般に認識され、共有され、使用されないというジレンマが私にはある。各種シナリオを分析、策定しても、一国、一企業、一個人の立場では、それがどこか遠い存在であり、自分事になっていないのだ。

実は、WEFにおいて、今年のグローバル・リスクを策定する過程で、グローバリゼーションの負の側面について議論しており、多く指摘されていたのは米中貿易戦争、中国の一帯一路外交による地政学的な均衡点の遷移などの地政学リスクだった。

しかし、そのリスクの以前に、新型コロナによるパンデミックリスクが顕在化してしまった。皮肉なことに、一帯一路に欧州から筆頭で参画したイタリアが甚大な影響を受けている。

グローバリゼーションの動力源たる情報技術や標準化が進めば進むほど、「超結合世界」が構築されるが、同時に、今回の感染拡大のように、繋がっていることでの負の側面や危険な側面も浮かび上がってくる。この点を説明するためには、これまでのESGの考え方を拡張する必要があるかもしれない。

日本はBuild Back Betterを提示せよ


では、ESGに向き合ってきた日本の関係者に、いまできることは何だろうか。一案だが、気候変動にかかるパリ協定と並ぶ国際的な枠組みであり、日本がイニシアティブを有する仙台防災枠組2030が定める「復興のコンセプト」を、政府はもちろん、産業界や経済界が一体となって、世界中に展開することではなかと思う。

それは、災い転じで福となす「3B」の戦略、Build Back Better(より良い復興)だ。日本のお家芸は改善だけではない。これまで、ことあるごとに国難状況を「創造的破壊」として、イノベーションを実現してきたのだ。

経済成長の契機となった戦後復興や、1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災などの自然災害からの復興に取り組み、G20や東京オリンピック・パラリンピック、大阪万博などで国際的なリーダーシップを発揮しようとしている日本の復興コンセプトを、ポストコロナにおけるイノベーション力として、3Bの考え方と日本の実例とともに広めたらどうだろうか。

いままさに、ESGなどへのニヒリズムを捨てて、右でも左でもなく、一個人や一事業者が、良き地球市民として民主的かつ集団的能力を構築するときである。ESGスコアの高低や対外的な情報発信媒体の出来栄えといった表層だけにとらわれるのではなく、非財務資本や長期投資のありよう、各社のサステナビリティ経営の目的を真に考えるときではないだろうか。

あらゆる新技術、新産業、都市の新設計は、今後、より社会志向、利他志向になるだろう。その実現のためには、改善レースではない、より良い復興のために、私たち自身を変革すべきときだと思う。その延長には、世界中の将来世代が、日本という国があってよかったと思ってもらえる未来が、必ずあるはずである。

文=蛭間芳樹

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