経済・社会

2020.05.08 07:00

パンデミックに揺れる世界に日本が示せる「より良い復興」コンセプト

PHOTOCREO Michal Bednarek / shutterstock.com

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受けて、2015年に採択されたパリ協定などを背景にして一気に盛んになってきていたESG投資は、どこへ向かうのだろうか。

ESG投資とは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の3つの視点から企業に着目して投資するものだが、社会全体の持続可能性(サステイナビリティ)が叫ばれるなか、近年は、資本市場でも注目を集め、一種の国際秩序さえ生んでいた。

しかし、国際秩序は基本的には流動的であり、一旦崩れると、一気に不安定になる。それは、徐々に、そして突然崩壊する。今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、いま、まさにその崩壊が起こりつつあるのかもしれない。

パリ協定採択から5年、SDGs期限の2030年まであと10年の節目にあたる今年、新型コロナウイルスの感染拡大で、残念ながら東京オリンピックと同様に、地球温暖化対策を話し合う国連の会議「COP26」の延期も決まった。

新型コロナウイルスが、世界中の市民の生命、そして国家の安全保障を脅かすリスクとして認識され、グローバル・アジェンダへの対応の優先順位が一変したのだ。

この状況のなか、日本企業で、いわゆるESG、SDGs、広くはサステナビリティ経営を担う部門の人たちは、いま、どのような対処をしているのだろうか。機関投資家たちは、ESG関連のポートフォリオをどのように組み替えているのだろうか。

本稿執筆時点では、明らかにESGという言葉を聞く機会も減っている。直近の決算や中期経営計画の下方修正に係る情報は適時開示されているが、本来統合して発信されるべき非財務・無形資産の情報はほとんど流通していないと思うのは、私だけであろうか。

グローバル・リスクとして顕在化したパンデミック


新型コロナのようなパンデミックリスクに関しては、例えば、2003年に世界的規模の集団感染となったSARS(重症急性呼吸器症候群)を機に、先進国あるいは国際機関(著名なところでは世界健康危機モニタリング委員会など)が、世界規模の健康上の脅威や経済への影響などに関するシナリオ分析を行っていた。

国内では、私も参画した財団法人日本再建イニシアティブ(現一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ)が執筆した「日本最悪のシナリオ 9つの死角」(新潮社、2013年)で、日本で起こるパンデミックのシナリオ分析をしている。今回、新型コロナの感染拡大に直面して、いままさに実社会で起こっていることの台本がここにあるようで、私自身も複雑な心境にある。

また、同様に私も参画している世界経済フォーラム(WEF)のグローバル・リスク研究では、気候変動、パンデミック、サイバーテロ、水資源危機、異常気象災害、地政学、格差などのグローバル・リスクに関する、リスク評価やシナリオ分析を主導している。

この研究は、WEFの年次総会であるダボス会議に出席する各界のリーダーを対象とするアンケート調査に基づき作成しているが、グローバル・リスクを、5つのカテゴリー(経済、環境、地政学、社会、技術)に分類し、今後10年間を見据えて、相対的な発生可能性と影響度の見通しを評価している。
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文=蛭間芳樹

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