メンターシップというと、形式的で多くの時間を取られると思われがちだが、必ずしもそうではない。お茶を飲みながらでもいいし、電話やメールで短いやり取りをするだけでもいい。「わずか5分のやり取りを断る人なんていないでしょう?」とサマンサ。
大切なのは、悩んでいる同僚に手を差し伸べることなのだ。それが自分のキャリア、ひいては自分自身に跳ね返ってくることを、2人とも痛感しているのだろう。メンターシップが重要な制度であり、会社全体に多大な利益をもたらしうる理由は、まさにここにある。
たとえば、メンターシップを投資戦略として考えてみよう。メンターシップは利息が利息を生む複利に似ている。自分の時間と経験を、組織全体の成長促進に転用する手段なのである。
マイケルはこう話す。
「私は昔から人の手助けをするのが好きでね。それでその人が成功したら、私もとても嬉しい。それに、社員のキャリアアップを手伝うことは、会社のメリットにもなりますからね」
いわく、メンターシップを通じて自分の経験を他の社員に「再投資」すると考えれば、いいことしかない。
「この制度のおかげで、社員と個別に話ができる。さまざまな才能の持ち主と語り合うことができ、さらにはその知見を社内全体で共有できるのです」
メンターシップが複利と似ている点は、もう一つ。メンターにサポートしてもらった人は、後々その人自身がメンターとなる可能性が高いのだ。これについてはサマンサが実証している。
「現時点で私には13人のメンティーがいます。マイケルが私にしてくれたことを理解し、同じことをほかの人にもしてあげるのは、とても大事なことだと思います」
メンターシップは、双方向の関係といえる。サマンサに言わせれば「相利共生的な知見の交換」とのことだが、まさにそのとおりなのだ。私たちはみな、互いに相手から学ぶことがたくさんある。つまり、どんなに大物といわれるベテラン社員であっても、まだまだ成長の余地はあるということだ。