ビジネス

2020.05.07

若手に指導して終わりではない! メンターシップは「投資戦略」だ

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メンターシップというと、形式的で多くの時間を取られると思われがちだが、必ずしもそうではない。お茶を飲みながらでもいいし、電話やメールで短いやり取りをするだけでもいい。「わずか5分のやり取りを断る人なんていないでしょう?」とサマンサ。

大切なのは、悩んでいる同僚に手を差し伸べることなのだ。それが自分のキャリア、ひいては自分自身に跳ね返ってくることを、2人とも痛感しているのだろう。メンターシップが重要な制度であり、会社全体に多大な利益をもたらしうる理由は、まさにここにある。

たとえば、メンターシップを投資戦略として考えてみよう。メンターシップは利息が利息を生む複利に似ている。自分の時間と経験を、組織全体の成長促進に転用する手段なのである。

マイケルはこう話す。

「私は昔から人の手助けをするのが好きでね。それでその人が成功したら、私もとても嬉しい。それに、社員のキャリアアップを手伝うことは、会社のメリットにもなりますからね」

いわく、メンターシップを通じて自分の経験を他の社員に「再投資」すると考えれば、いいことしかない。

「この制度のおかげで、社員と個別に話ができる。さまざまな才能の持ち主と語り合うことができ、さらにはその知見を社内全体で共有できるのです」

メンターシップが複利と似ている点は、もう一つ。メンターにサポートしてもらった人は、後々その人自身がメンターとなる可能性が高いのだ。これについてはサマンサが実証している。

「現時点で私には13人のメンティーがいます。マイケルが私にしてくれたことを理解し、同じことをほかの人にもしてあげるのは、とても大事なことだと思います」

メンターシップは、双方向の関係といえる。サマンサに言わせれば「相利共生的な知見の交換」とのことだが、まさにそのとおりなのだ。私たちはみな、互いに相手から学ぶことがたくさんある。つまり、どんなに大物といわれるベテラン社員であっても、まだまだ成長の余地はあるということだ。
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翻訳=波多野理彩子

この記事は 「Forbes JAPAN 6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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