──社内の大御所と新人、両者が共通して持っているものは?
答えは「お互いの存在」だ。
メンターシップの不思議な力は、まさにここにある。メンターシップという提携関係は、ある真実に基づいている。我々は誰しも、他者に教え、そして教えられるものを何かしら持っているということだ。
メンターシップを行うのに年齢や肩書は関係ない。実践することに意味がある。またメンターシップは、自分の知見を上の人間が下の人間に、あるいは下の人間が上の人間に教え込んだら終わり、というものではない。そこで得た知見をあらゆる場でシェアしていくことが、メンターシップの本質なのだ。
メンターシップはそのとき限りのものではなく、その人の生涯にわたって影響を与え続けることもある。広告マーケティングサービス会社のインターパブリックグループのマイケル・ロス会長兼CEOと、ウォルマートのマーケティング・コミュニケーション部門でシニアマネジャーを務めるサマンサ・クラインは、その最たる例といえよう。
2人の師弟関係は、サマンサが広告大手マッキャンエリクソンに入社したばかりの頃に遡る。社内の制度でマイケルがサマンサのメンターを務めることになったのだ。以来、数年にわたりメンタリングを続け、2人は師弟の絆を深めていく。メンターシップは互いのキャリア形成にも影響し、双方によい結果をもたらしている。
「自分がメンターであろうとメンティー(教え子)であろうと、メンターシップという関係を持つこと自体に価値がある」とマイケルは言う。