ビジネス

2020.05.07

若手に指導して終わりではない! メンターシップは「投資戦略」だ

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人材育成法の一つとして、日本の企業でも導入が進むメンターシップ(メンター制度)。社員の成長や会社への定着、企業文化の醸成を促すとして注目されているが、この制度の効果はそれだけではない。自分の時間や経験を他の社員に分け与えることは、相手だけでなく自分にも、ひいては会社全体にも利益をもたらすという。期待できる強力かつ驚くべき効果とは?

──社内の大御所と新人、両者が共通して持っているものは?

答えは「お互いの存在」だ。

メンターシップの不思議な力は、まさにここにある。メンターシップという提携関係は、ある真実に基づいている。我々は誰しも、他者に教え、そして教えられるものを何かしら持っているということだ。

メンターシップを行うのに年齢や肩書は関係ない。実践することに意味がある。またメンターシップは、自分の知見を上の人間が下の人間に、あるいは下の人間が上の人間に教え込んだら終わり、というものではない。そこで得た知見をあらゆる場でシェアしていくことが、メンターシップの本質なのだ。

メンターシップはそのとき限りのものではなく、その人の生涯にわたって影響を与え続けることもある。広告マーケティングサービス会社のインターパブリックグループのマイケル・ロス会長兼CEOと、ウォルマートのマーケティング・コミュニケーション部門でシニアマネジャーを務めるサマンサ・クラインは、その最たる例といえよう。

2人の師弟関係は、サマンサが広告大手マッキャンエリクソンに入社したばかりの頃に遡る。社内の制度でマイケルがサマンサのメンターを務めることになったのだ。以来、数年にわたりメンタリングを続け、2人は師弟の絆を深めていく。メンターシップは互いのキャリア形成にも影響し、双方によい結果をもたらしている。

「自分がメンターであろうとメンティー(教え子)であろうと、メンターシップという関係を持つこと自体に価値がある」とマイケルは言う。
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翻訳=波多野理彩子

この記事は 「Forbes JAPAN 6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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