ビジネス

2020.05.07

米国で勃興する「超地元密着型メディア」のビジネスモデル

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地域に特化した広告が強み


プログラマティックバイイング(運用型広告)も、重要な収益源だ。BIAのマネージングディレクターであるRick Duceyは「広告主は、ハイパーローカル・メディアへの出稿に関心を強めている」と話す。

BIAが広告主にアンケート調査を行ったところ、81%が何かしらのジオターゲティングを活用していることがわかったという。75%の広告主が特定の地域限定でテレビ広告を流している。BIAの予測によると、モバイル広告におけるロケーションターゲティング広告の支出額は、2019年の285億ドル(約3兆円)から2024年には502億ドルに増加するという。

現状のモバイル広告費に占めるロケーションターゲティング広告の割合は約36%で、今後はさらに増えることが予想される。

Patch以外にも、ハイパーローカル・ニュースを提供している企業がある。その1つが、「Nextdoor」だ。同社が運営するサイトでは、コミュニティの住民たちがローカルな話題やイベント、おすすめ情報などを投稿している。

大統領選での活用も期待


Patchと異なり、Nextdoorは11ヶ国で事業を展開している。同社は米国で2011年に設立され、直近の評価額は21億ドルに達する。他には、経営危機に陥っている新聞社「McClatchy」が、今年4月にコロラド州で立ち上げたローカルニュースサイト「The Longmont Leader」がある。

このサイトは、グーグルのニュース・イニシアティブの資金援助を受けており、市民ジャーナリストによる記事やイベント情報など、ローカルに特化したニュースを提供するという。McClatchyは、昨年もグーグルから支援を受け、オハイオ州ヤングスタウンでハイパーローカル・ニュースサイト「Mahoning Matters」を立ち上げている。

Patchは幾度の危機を乗り越えて事業を成功させたが、他のハイパーローカル・メディアの多くは経営に苦しんでいる。「ローカル・メディアはジャーナリズムやビジネスモデルに革新をもたらし、ユーザー数や広告主の数を拡大することに成功したが、広告収益だけでは経営を維持することが困難なのが実情だ。第2の収益の柱としてユーザーへの月額課金を模索するケースもあるが、スケールが難しい」とBIAのDuceyは話す。

ハイパーローカル・メディアで注目を集めるニュースは、新型コロナウイルスのパンデミックを除けば2020年の大統領選挙だろう。大統領選挙では、数十億ドルもの広告宣伝費が投下される。投票データが集まるにつれ、各陣営はジオターゲティング広告を活用してより効果的な選挙活動を展開しようとし、ハイパーローカル・ニュースの重要性が増すことになるだろう。

編集=上田裕資

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