出口の見えないなかで、いち早くオンライン授業を開始した自治体もあるが、熊本市や東京都港区、埼玉県久喜市など一部に限られており、子どもたちの教育環境には大きな格差が広がるばかりだ。
このまま休校が継続されると子どもたちにどんな影響が出るのか、また、学校が再開されたときにどんな状況が生まれるのか。「病弱教育」のプロフェッショナルである副島賢和さん(昭和大学大学院保健医療学研究科 准教授・学校心理士スーパーバイザー・昭和大学附属病院内学級担当)に話を聞いた。
悲しみや不安に向き合える力をつける
副島さんは、東京都の教員として25年間を過ごし、院内学級の担任も務めた。現在は、大学などで発達心理学や臨床心理学、「病弱教育」などについての講義を行なっている。
副島さんが専門とする「病弱教育」とは、病気等により、継続して医療や生活上の管理が必要で学校への通学が困難な子どもに対して、病院内や自宅などで行う教育を指す。
「休校による子どもたちへのネガティブな影響は、学習の空白、運動や遊びの制限、集団活動の不足、人とのかかわり合いの制限などが考えられます。これらへの対応は、私たち病弱教育の教員がいままでも考え、行なってきたことなのです。だから学校が再開されたときの子どもたちの状態も想像できます。
入院や自宅療養で学校に通えない子どもたちの場合、その子がそれまで通っていた学級は日常通りに動いていますから、僕たちは、院内学級で、入院している子どもに“力をつけて”、元の学級に戻すということを心がけてかかわります。
“力をつけて”というのは、子ども自身が安全と安心を感じながら、悲しみや不安などに向き合える力をつけていくということです。自分は自分のままでいい、生まれてきてよかった、そう思えることができたら、困難に向き合う力になります」
副島さんは、自宅待機が続くいま、病弱教育での子どもたちへのかかわりから、家庭に応用し実践できることがあると語る。そのかかわりが、やがて学校が再開されたときにもヒントになるという。
「1人1人が力をつけていくと、“困っている子がいたら助ける”ことが自然にできる学級になっていきます。先生たちも、これまでの学校教育のなかで、学習面だけでなく、そうしたことを繰り返し子どもたちに伝えてきたはずです」