バイオ燃料の最大の問題の1つは、必要となる土地の面積があまりにも巨大なことだ。最も効率的なバイオ燃料の原料となる大豆の栽培には、石油油田の450倍から750倍の面積の農地が必要になる。ブラジルで最も効率的なバイオ燃料として普及が進む、さとうきび由来のエタノールの産出にも、石油の産出に必要な土地の400倍の農地が必要となる。
映画では環境保護活動家として知られる元副大統領のアル・ゴアが、「若者向けの民主的なテレビ」として設立したカレントTVを、2013年に中東の産油国であるカタールのアルジャジーラに売却し、莫大な利益を得ていたことにも触れている。
アル・ゴアはその1年前に「石油への依存を減らすことが、人類の未来につながる」と述べていた。
太陽光パネルは原子力よりも有害
再生可能エネルギーの推進派は、太陽光エネルギーが石油を置き換える存在になるとアピールする。ドイツでは、かつてエネルギーの80%を太陽光パネルで得ていたと主張する人もいる。
しかし、2019年時点で、太陽光や風力で満たされたのはドイツの電力エネルギー全体の34%でしかなかった。ドイツのエネルギーの大半は、天然ガスや石油、トウモロコシ由来のバイオガスから生み出されている。
さらに、太陽光パネルの製造には膨大な種類の素材が必要になる。ソーラーパネルの製造には原子力発電プラントの16倍にも及ぶ、セメントやガラス、コンクリートや鉄が必要で、排出されるゴミの量は300倍にも達するという。
また、太陽光パネルの製造や、ソーラー発電所の建設に必要な資材の多くは、米国最大のコングロマリットの1社として知られるコーク・インダストリーズが製造している。石油や石炭、天然ガスなどのエネルギー産業を操るコーク・インダストリーズは、環境保護活動家が目の敵にする企業だ。
「これは全く皮肉な話としか言えないだろう。環境に優しいはずの太陽光パネルが、環境問題の元凶となる企業の部品で作られているんだから」と映画に登場する関係者は笑う。
環境を守ろうとする人々の行動が、結局、さらなる環境破壊を引き起こしてしまうのだ。この映画は人々の「サステナビリティ」に向かう欲望が、ある種の「不死への欲望」に近いことを示唆している。
「人々の行動を変えるために必要なのは、私たちはいつか必ず死ぬという事実に気づくことだ。我々は閉じた世界観の中で暮らしている」と映画の中で社会学者は話す。
「太陽光発電が人類を、未来に連れて行ってくれると信じ込んでいる人々は多い。けれどもそれは妄想に過ぎない」