「ファーストフード店やレストランはすべて閉鎖された。しかし、それらの飲食店こそ、冷凍フライドポテト全体の60%が消費される場だ。小売販売も選択肢としてまだ残っているが、多くの国では自宅にある冷凍庫のスペースに限りがあり、すでに入っている食品をまずは消費しなくてはならない。一時期は世界的に買い占めが起こり、スーパーマーケットの冷凍食品売り場は空っぽになったが、正常に戻ったいま、冷凍食品市場向けの生産は減りつつある」
同様に、レストランも閉鎖されており、その再開はいちばん後回しになるだろう。屋外の屋台だけは営業が許されているが、互いに距離を保ったり、テイクアウトしか販売できなかったりという制限が課せられている。
「いずれにせよ、消費は減っている。ベルギーのフライドポテト専門店フリットリー(friterie)は、単にフリッツを買うだけの場所ではない。じゃがいもが揚がるのを待つ客たちが交流する社交場という意味合いもある」とコールズは言う。「政府は、休業したビジネスに4000ユーロ(約47万円)の補償金を給付した。フリットリーの大半も、自発的に閉店を決めている」
こうした休業であおりを受けているのが、流通や加工用の施設と、一時的に失業状態となった従業員、そして、じゃがいもの自由価格がタダ同然という事態に直面している農家だ。
そんななか、各社は食品を廃棄せずに済むよう解決策を探っている。冷蔵施設を最大限に増設し、可能な限りフレーク状や粒状に加工しているほか、家畜用飼料に加工して農家に提供している業者もある。目下進行しているプロジェクトでは、生での消費に適した品種を洗って梱包し、フードバンクに提供できないものかと模索中だ。生のじゃがいもをバイオエネルギー施設で燃料にするという使い道もある。
しかし、これら一連の取り組みを行っても、残った収穫物のごく一部が使われるにすぎないだろう。貯蔵できる期限は迫っている。(通常なら3時間でフライドポテトに加工される)じゃがいもは、すぐに傷がついたり黒い斑点ができたりする。そうなってしまうと、「調理用じゃがいもとして不適切になる」
業界への支援としては、欧州じゃがいも加工業協会(EUPPA)と、フランドル地域とワロン地域の地方省庁が、助けの手を差し伸べている。
「ベルギーが先頭に立って、ヨーロッパ諸国のじゃがいも農家支援を始動させている」とコールズは話す。「じゃがいも農家の損失は甚大なものになる可能性がある。また、現在の状況は、早生品種と来季の収穫に影響を与えるだろう。新型コロナウイルスによる制限が緩和されたときに再開が最も遅くなるのは外食産業だと考えられている。そして、その制限緩和がいつになるのかは誰にもわからない」