After/Withコロナ時代において、アパレル市場はどうなるのだろうか。そして「装う」機会が失われたとき、人々は何を求めるのだろうか。ファッションエディターの軍地彩弓が語る。
コロナ禍で露見した「大量消費型ビジネス」の限界
7都府県を対象地域として発令された緊急事態宣言を受け、三越伊勢丹や大丸松坂屋百貨店、パルコなど百貨店や大型商業施設は4月8日から当面の間、一部店舗を臨時休業するなど、ファッション業界にも大きな波紋が広がっています。
そもそも百貨店では2019年10月の消費税増税と暖冬の影響もあり、前年比ベースでジリジリと売上が下がっていました。そこに売上を下支えしていた外国人観光客の減少がとどめを刺すように売上が急落。アパレル関連企業では「マジェスティックレゴン」を運営するシティーヒルなど倒産する企業も出てきているほか、オンワードホールディングスは全店舗の3割強にあたる約700店舗の閉店を発表するなど、この流れは加速すると見られています。
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ただ、これはコロナ禍だけが要因というわけではありません。危機的な状況下で露わになったのはいわば、旧来型──大量生産・大量消費型ビジネスモデルの脆弱性と言ってもいいかもしれません。
消費者はかねてより「スマートコンシューマー」化し、情報を主体的に選択して自らの価値観に合ったものだけを選ぶようになってきました。2010年代から「断捨離」や「こんまり」など「モノを溜めない・買い込まない」生き方やミニマリズムが台頭し、人々の共感を集めてきました。
それが顕著に現れているのが「Z世代」と呼ばれる10代、20代です。彼らに話を聞くと、「モノを買う」ことそのものを、ある種のリスクテイクだと捉えています。いくら安くて、トレンドを取り入れていても、「1シーズンしか着られない」「リセール(転売)できない」ものは、限られたクローゼットのスペースを奪うだけで「価値がない」というのです。これまで数多のブランドやファッション誌が発信し続けてきた「トレンドを取り入れなければ」という風潮とは相容れず、むしろ来年着られなくなるイメージのトレンドはネガティブワードになりかねないのです。
「どこにでもあるような流行りの品」を次々に買い換えるのではなく、「生活をよりよくするような価値のあるもの」を、しっかりと見極めたうえで購入し、使わなくなったものはリセールする──。定価にはテナント代や人件費などが上乗せされていますし、同等のものはネットでもっと安く手に入る。何より店頭に足を運ぶ手間もかかります。ありふれたものを衝動買いするのは「賢くない」と感じてしまうのです。