5G×メディア×スポーツの未来


元来、通信会社は前述したFIFAのeスポーツ大会のように遠隔地からアバターを操作するケースを想定していた。EVO JAPANにおいても、5G環境について積極的にプレーヤーのアンケートなどを募り、準備を進めてきた。

リアルな大会では、アリーナのように大会場を押さえ、数多のプレーヤーを現地に呼び、警備も充実させ、大観衆を集め、一大イベントを開催、諸々莫大なコストをかけてきた。だが5G通信網の充実により、プレーヤーは世界各国・現地からの参戦をも可能にし、観客にはインタラクティブ性をもたせたサブスクリプション・モデルを提供、XRを駆使し自宅で観戦を体感させる…そんな近未来を想定してきた。

しかし、現実世界は我々が想定していたよりも、さらにサイエンス・フィクション染みていた。

新型コロナウイルス対策により世界各地の都市部は「都市封鎖」され、不要な外出には罰金や禁固刑が科せられるような事態。これにより世界中のスポーツ・イベントが、延期もしくは中止の憂き目に遭い、その再開にも疑問符がついたままだ。日本のような緩い隔離社会ですら、スポーツの開催などメドがたたない。すると想定していた「近未来図」でしか、スポーツをたのしむ余地がなくなった。

ReadyPlayerOne
近未来の予想図はそう遠からず実現するかもしれない  (GettyImages)

もともとBMWなどは今後、リアルなスポーツ領域よりも、eスポーツにこそより宣伝費を投入するかもしれない…とコメントしていた。さらに「スポーツ・イベント」開催のリスクがこうも高まると、その傾向により拍車がかかり、スポーツ・ビジネスの観点からもeスポーツがスポーツを代行するポテンシャルを秘めている。

「グランツーリスモ」とは異なり、アスリートがコントローラーを握るような現実があるとは思われない。しかし、映画『Ready Player One』のようにヘッドギアやセンサーを駆使し、身体的動作が仮想現実のスポーツに反映されるシステムが登場するのもそう遠い未来ではないだろう。アスリートが仮想空間でサッカーW杯に参加する日がやって来るかもしれない。

これもあくまでエキシビションながら、MLBはVRによる「ホームラン・ダービー」を米国内で開催した実績がある。優勝者はMLBオールスターのリアルな「ホームラン・ダービー」に招待された。MLBはこれを日本やメキシコに広げる構想を持っている。

新型ウイルスによる都市封鎖実現が、たまたま今回のみ、特殊なケースであれば、こんな夢想も杞憂に過ぎない。だが今後も、人類の手に負えない新型ウイルスが出現しないとは限らない。そうなると、隔離社会下においても、都市封鎖においても、イベント開催に影響を与えない通信ネットワークを駆使したeスポーツが、現在のスポーツにとって変わるような時代を迎える可能性は、やはり否定できない。

5Gとスポーツは、そんな未来をも夢想させる。

青空の下、ビールを飲みながら白球を目で追う......そんなスポーツ観戦の醍醐味の早期復活を願いつつも。


連載:5G×メディア×スポーツの未来
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文=松永裕司

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