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2020.05.02

コロナ以降は「応援消費」の時代に arca代表・辻愛沙子が挑む「社会派クリエイティブ」

arca代表取締役社長・辻愛沙子さん


ブランドコンセプトから店舗デザイン、PRまでをトータルプロデュースしているタピオカ専門店「Tapista」。2019年7月の参議院議員選挙の際には、投票済証明書を提示するとタピオカドリンクが半額となるキャンペーンを実施した。SNSで話題になるとともに、選挙当日に店舗を訪れた人数は3500人を超えた。

コロナ

“若い女性=思慮が浅い”という偏見を変えたい


「タピオカ選挙のキャンペーンを考案した際も、週刊誌の『タピオカに並ぶバカ女ども』というような記事を見て、 “若い女性=思慮が浅い”というステレオタイプの偏見を少しでも変えたいという想いがありました。誰かに危害を加えているわけでもなく、ただ自分の好きな人と好きな物を楽しんでいるだけで、なぜ揶揄されなければいけないのか。『バカと揶揄された若者たちの中にも社会について考えている人がこれだけいる』ということを可視化したいと考えました。結果的に1日で3500名以上もの利用があり、渋谷には長蛇の列が。ギャルたちが投票済証明書を見せあったりしていて、なかなか目にできない光景だと思いました」
AKB48・指原莉乃もSNSで自ら投稿した。依頼したわけではなく、自主的な投稿であった。

「もちろんお店側のメリットもあります。当日の集客・売上アップの他、SNSやメディアで盛り上がったことにもPR価値を感じていただけたと思います。AKB48の指原莉乃さんがツイッターで投稿してくださったことには驚きましたが、社会課題と向き合う施策は、受け取った方が意義を感じれば『ぜひ多くの人に伝えよう』と動いてくださることも魅力です」

コロナ以降、SNS世代の「応援消費」が加速


「コロナ以降は、生活者の社会参加意識が高い世界に変わる」と予測する辻さんだが、Z世代を中心に、以前からこのパラダイムシフトは始まっていたと話す。

「Z世代の大きな特徴のひとつは、SNSネイティブであること。これは、小さな声を発信・受信しやすい世界で生きてきたことを意味します。以前はマイノリティの意見を世の中に届けるためにはデモを起こすなど大掛かりな行動が必要でしたが、現在はSNSで声を上げることができます。

賛同して応援する側も、デモに参加したり、自ら声を上げたりできなくても、『いいね』やシェアをする、もしくはオンラインで署名や寄付を行うことができるようになりました。その結果、政治や学問、ジャーナリズムという領域にいなくても、ファッションやスポーツ、音楽、私なら広告など、自分の好きな領域で社会課題にどう取り組めるかを考え、実践している人が増えていると感じています」


中学・高校時代を海外で過ごしダイバーシティの重要性を知ったという辻さん。「悪意のある差別的発言をされている人や企業とは仕事をしないというのがポリシーです」

そして、これからの世界では、日本の生活者の「応援消費」が加速すると話す。

「新型コロナウイルスによる経済危機の中、すでに多くの方がウーバーイーツで自分が応援したい飲食店のデリバリーを注文したり、音楽業界や映画業界のクラウドファンディングに参加したりしていますが、この経験を通して今後においても『応援するために物を買う』という習慣が根付いていくはずです。これからは日本もアメリカのように、誰かのために活動している人、社会課題の解決に挑戦している企業にお金が集まるようになると予想しています。

日本企業はこれまでにもCSRなど社会的な活動は行っていたはずですが、CMなどでその取り組みを前面に出すケースは少なかったと思います。生活者がついてこなければ利益に繋げられないため二の足を踏むのは当然だと思いますが、コロナ以降は消費者の意識変容によりその状況も大きく変わるでしょう」
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文=黄 孟志

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