ビジネス

2020.05.02

コロナ以降は「応援消費」の時代に arca代表・辻愛沙子が挑む「社会派クリエイティブ」

arca代表取締役社長・辻愛沙子さん

東京で発見した「都会的ソーシャルビジネス」を取り上げ、これからの時代に業界を問わず必要となる「企業・消費者・社会の共栄」を実現させるヒントをご紹介しようという本連載。

第3回は、Z世代の女性を巻き込みながら社会課題の解決を目指す社会派クリエイティブエージェンシー「arca(アルカ)」をピックアップしたい。代表取締役・辻愛沙子さんは現在24歳。報道番組『news zero』のレギュラー解説者に抜擢されるなど、新時代の担い手として業界の枠を超えて注目されている彼女が、「コロナ以降、企業は社会問題に対するスタンスの表現がより重要になる」と語る理由とは。

「企業の課題」と「社会課題」の同時解決


arcaの主な事業は企業の課題を、広告などのクリエイティブで解決するクライアントワーク。Z世代の女性をターゲットにした企画・制作を得意とするが、最大の特徴は、手掛けるプロジェクトを通して「社会課題」の解決にも挑むことだ。


「女子力のアップデート」をテーマに、女性の多様なあり方をビジュアル化した屋外広告(渋谷と原宿に設置)。クライアントはヘアケアブランド「ミルボン」。QRコードを読み込むと出演する女性たちのインタビューをスマートフォンで読むことができる。有村藍里、菅本裕子などタレント・インフルエンサーのほか、一般公募でも3名を選出。辻さん自身も出演した。

「ミルボン『LOVE YOUR GIRLS POWER』では、日本の女性の生きづらさや不自由さに一石を投じることが大きなテーマでした。日本語の『女子力』にはかなり偏りがあると感じていますが、本来はもっと多様な『女子力』の形が存在するはず。そこで、髪にこだわりと個性を持って自分を表現する10名の女性からのメッセージを通して、新しい『女子力』=“GIRLS POWER”を提案する企画を実施しました。ミルボンさんが女性の自由な表現を支えるヘアケアブランドであるというメッセージを世の中に発信しながら、若い女性たちに社会的抑圧から解放されるきっかけをつくれたらという考えでした」

「自分のための企画だと思った」


「有村藍里さん、菅本裕子(ゆうこす)さんなど著名人7名に加え、公募で3名の女性にも出演していただきました。短期間で600名からの応募があり、面接時には『自分のための企画だと思った』と話す方や、想いが溢れて涙を流す方も。きっと同じように、この広告を見た女性の中にも、ブランドからのメッセージを“自分事”として受け取った方は少なくなかったと想像しています。社会の課題や悩みにアプローチすることは、生活者の中に強いファンをつくることにも繋がると感じた事例でした」


大学時代にインターン先の広告会社で社員に抜擢され21歳でビジネスをスタートし、23歳でarcaを設立した。「働き始めた頃、『女子大生なのに』という枕詞をつけられることが多く、日本社会における性別や年齢に対する『悪意のない無意識の偏見』を感じる機会が多くありました。事業も広告も多くの方に影響を与えるものなので、自分が取り組むのであれば、そういった社会課題の解決も目指せたらと思いました」
次ページ > “若い女性=思慮が浅い”という偏見を変えたい

文=黄 孟志

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