秘訣は「当たり前」の徹底にあり 長期的な経営改革が高収益を生んだ。 - 大塚商会社長 大塚裕司


――これまでの成功体験を否定し、無駄を排除するとなると、大きな抵抗もあったのではありませんか。

大塚:いえ。何しろ「トゲの刺さった恐竜」でしたから、改革の成果がすぐに出たのです。ちょっと経費を絞っただけで、20億円の効果が出た。それで正式に経営改革をスタートさせていったのです。結果として、在庫の一掃で利益率は向上し、顧客情報の一元管理により貸し倒れも大幅に減少していきました。例えば昨年実績で言えば、6,000億円を超えている売り上げに対し、1億円以下でした。

――「大戦略」の後の展開はいかがですか。

大塚:2000年代に入ってからは顧客管理と営業支援を一体化した「SPR」というシステムを導入し、全国で97万社のお客様と未取引企業50万社の情報やサポート履歴を全部一元管理し、IT化し全社で共有しました。これにより営業効率は格段に上昇し、お客様にとっても最適な提案ができるようになりました。結果として、営業成果4%が8%に上げれば、計算上は2,000人の営業人員が4,000人になったことと同じです。人を増やさなくてすむどころか、社員の休日を増やすことができました。これが社員を増やさず「生産性」を向上させる仕組みです。

“伸びしろ”はまだ十分ある

――お話をお伺いすると、ごく当たり前のことを着実にやってこられたように感じられます。

大塚:私たちにそれが実現できたのは、何をおいてもエンドユーザーさんをたくさん持っているからだと思います。これは父の時代の営業力の賜物だと思っています。

――今後はやはり、今のまま、「当たり前」のことをしていくのでしょうか。

大塚:はい。当社のお客様の65%は、まだ「たのめーる」だけのお客様です。この方々が年間で使っている、IT系や水やお茶まで含めた会社の運営費はたぶん何十兆円になる。そこから見るとウチはまだ貢献できていない部分、つまり伸びるための余地がたくさんある。だからまだ海外に出て行く必要もない。今後もお客様の信頼に応えるため、これまで同様、努力していきたいと思っています。

文=鈴木裕也(フォーブス ジャパン)

この記事は 「Forbes JAPAN No.10 2015年5月号(2015/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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